月刊誌『近代消防』2013年11月号、関係者による座談会「3.11における東京消防庁作戦室の教訓」から(前回は2013年10月24日に紹介しました)。
東京消防庁では、訓練の際に、状況や手順が示されている「シナリオ訓練」の他に、それが事前には示されていない(順次わかる)「ブラインド型訓練」を行っています。3.11の前年、平成22年11月20日から21日にかけて、全職員24時間体制の訓練を、ブラインド型で実施しました。これが、3.11の際、すなわちこれまでに経験したことのない災害に役立ったとのことです。
松井救助課長:ブラインド型訓練が一番特徴的なのは、完結できずに終わってしまうことです。普通の訓練では、要救助者を全員救出して終了となりますが、24時間(訓練)では、発見できなかった要救助者がいたりするのです。そういう、残念な結果も経験できます・・
久保田消防係長:ブラインド型訓練を何度もやりました。やるたびに、失敗がありまして、その都度、指導を受けました。自分たちで検討会を行い、次はこうしようと工夫した記憶が残っています。そのおかげで、3.11の初動の時に、自然に動けたのではないかと思います。
新井総監:失敗経験が活きるのです。失敗した後の工夫が大事です。それで能力が向上するのです。失敗しない訓練をやってもしょうがないのです。
五十嵐副参事:宮城県の災害対策本部にいたときに(指揮支援隊長として、真っ先に宮城県に入って指揮を支援した)、このままでは、うまく行かないと思ったのです。そこである程度、イニシアチブを取って、一つ一つ決めてしまった方が早いなと思いました。何回も訓練をやっているので、こうしたらいいなというのがわかるのです。私が上司に叱咤されながら訓練したときの失敗は、現実に活きました。
例えば、連絡が取れない、状況がわからない状態で、人がどのように考えるかがわかる。具体的に何をしたらいいかが出てこない。自分から動こうとしない。そうであれば、やるべきことをこちらからどんどん提案することにしました。「今、大事なのは、状況確認ですよね」「道路の状況はどうですか」など話を振ると情報が出てきます。ブラインド型訓練で失敗を何度もしているからこそ、できるようになったのでした・・
松井救助課長:ある県でのブラインド型訓練で、「失敗して覚えましょうね」という話をしたら、「うちは失敗しません。しっかりやります」と話していました。でも、やっぱり見ていたら問題点がいろいろありました。「どこどこの方、現在の状況を教えてください」と聞くと、シナリオに書いていることしか答えられないので、こちらの質問には答えられませんでした。そのような訓練をやっていては、駄目です。実災害の時に、何をやって良いのかわからなくなってしまいます・・