季刊「レヴァイアサン」2004年春号(木鐸社)が、「政官関係」を特集しています。飯尾先生の論文は、日本の議院内閣制は、本来とは違う運用がなされていること、それは「官僚内閣制」とでもいうものであって、別途「与党」が議院内閣制を代替している、というものです。真渕先生の論文は「萎縮する官僚」です。第10章「政治と行政の在り方」の議論の参考になります。(2004年5月5日)
長谷部恭男著「憲法と平和を問いなおす」(2004年4月、ちくま新書)は、表題からのイメージとは異なり、立憲主義(憲法)の意義・機能・限界や、平和主義の可能性を述べたものです。これまでの憲法学の教科書のような解釈学でなく、また「政治的主張」でもありません。
憲法や平和、その基底にある正義などを相対化した、政治学的分析と言えるでしょう。民主政治とは何かを考える上で、大変参考になります。拙著「新地方自治入門」第8章では、先生の前著「比較不可能な価値の迷路」を引用しました。
櫻田淳著「国家の役割とは何か」(2004年3月、ちくま新書)は、国家の役割を「力の体系」「利益の体系」「価値の体系」の3つから、わかりやすく説明しています。もっとも、この説明は、恫喝・誘導・説得の3つの手段から見た説明です。私は、「新地方自治入門」では、このような見方は、「行政の手法」p236~と「国家が調達するものと提供するもの」p269~で説明しました。
しかし、そのような手段や仕組みの考察だけでは満足できないので、より広く政治に期待される「役割や機能」を、「公の機能とは」p222~で議論しました。政治の仕組みを価値中立的に分析する(抽象化する)だけでなく、政治は何を目指すべきか、アウト・カムを視野に入れた議論をしたいからです。(2004年5月16日)
中島誠厚生労働省生活習慣病対策室長が、「立法学」(法律文化社)を出版されました。九州大学助教授に3年間出向した際の、講義をまとめたものです。内容は日本の立法過程論で、省内過程、政府内過程、与党内過程、国会内過程の段階ごとに説明しています。そして特徴として、官僚主導、不透明な与党審査、不透明な国対政治、形骸化した国会審議を挙げています。
問題関心は、「政と官のありかた」です。アカデミズムがこれまで実務と距離を置き、現実の問題に正面から取り組んでこなかったことを批判し、それへの「解答」として執筆されたものです。現職官僚がアカデミズムも意識して書いた、内容の濃い本です。類書がないので、関心ある方には大いに役立つと思います。