渡邊啓貴著『現代フランス 栄光の時代の終焉、欧州への活路』(2015年、岩波現代全書)が、勉強になりました。日本を代表するフランス研究者による、ミッテラン大統領以来30年の、フランス政治、社会の分析です。一つの国の30年を270ページに盛り込むのは、大変な労力と技が必要です。先生が、ずっとフランスと併走してこられ、その都度に論文を書いてこられたからこそできることです。
日本で同様に、この30年間を300ページの本に凝縮しようとしたら、どうなるでしょうか。誰ができるのでしょうか。細部にわたる事実と理解、そして大胆な割り切りがないと書けません。そして論文の善し悪しは、その切り口が切れ味がよいかどうかで決まります。年表の記述をいくら詳しくしても、よい論文・分析にはなりません。
先生の分析では、フランスのこの30年は、副題にあるように、栄光の時代の終わりであり、EUへの統合です。しかし、単線的に進んだのではありません。国内の社会経済状況に規定され、国際的環境がフランスをそこに追いやります。他方で、リーダーも意図しつつあるいは抵抗しつつ、その流れに乗っていきます。乗らざるを得ないのです。この項、続く。