先生が、ものごとの根源まで遡って考えた例として、貨幣と法人があります。
貨幣がなぜ通用するかについては、商品説(特定の物、例えば金(ゴールド)に対する、人の欲求に支えられているとする考え方)と、法制説(政府の命令によるとする考え方)が有名です。しかし先生によると、あるモノが貨幣として使われるのは、「貨幣として使われているから貨幣である」という「自己循環論法」です。これも、なぜそうなるのか、本をお読みください(p223)。
法人については、単なる企業と法人とは何が違うか。企業は所有者(オーナー社長)が、企業の資産・商品を自由に処分できます。それに対し法人の場合は、株主が会社を所有しますが、会社が会社の資産や商品を所有しています。株主は、会社の資産を所有していませんから、自由には処分できません。これを、先生は「2階建て構造」と呼ばれます(p288)。
「企業は誰のものか」。株主のものか、経営者のものか、従業員のものか。これらの議論が、2階建て構造で明快に説明されます。企業統治の場合は、オーナーと経営者との関係は、委任契約になります。それに対し、法人会社での統治は、会社の経営者は株主との間で委任契約を結んでいるのではなく、会社との間で信任関係にあります。企業の経営者はオーナーの指示に従う必要がありますが、会社の経営者は株主の指示に従うのではなく、会社に対し責任を負うのです(p349)。詳しくは、これも本を読んでください。