今回の復興に際して、新しく作った制度として「復興交付金」があります。自治体の公共施設が災害を受けた際は、復旧工事を支援する国庫負担金があります。被害が大きく、自治体が負担できないことがあるからです。国が「保険」の機能を果たしているのです。しかし、災害復旧負担金は、被害を受けた施設を元に戻すことしか面倒をみません。「復旧」なのです。そこで、学校や病院を高台に移転して復旧する(復興する)ことや、街並みの高台移転工事のために、「復興交付金」を作りました。国が経費の大半を支援し、残りは復興特別交付税で支援します。
さらに、そのような「基幹事業」にあわせて、付随する事業を実施できるように「効果促進事業」という補助金も作りました。大きな金額を用意しているのですが、自治体では、まだ十分に活用してもらっていません。これまでは、自治体も復旧事業と基幹事業を発注するので精一杯という事情もありました。しかし、高台移転の工事などが進むと、まちづくりのために、様々な事業が必要になります。例えばそこまでの取り付け道路が必要だとか。そこで、効果促進事業交付金を、どのような事業に使えるか、先行事例を参考に例示しました。「効果促進事業の活用パッケージ」です。
事例をみていただくと、「なるほど、こんな事業も必要になるなあ」というのが、並んでいます。例えば、公営住宅にコミュニティ集会所を作ること、防災集団移転元地の活用など。工事の進捗状況を市民に情報提供することや、公共施設をつくる際の維持管理費の推計作業(それによって、施設規模を縮小しています)にも使ってもらっています。この効果促進交付金は、かゆいところに手が届く「画期的な制度」だと思います。また、現地の実情に応じて、このように使いよいように進化させています。復興交付金制度は、財務省から出向してきた職員が中心になって作ってくれた「傑作」です(関係資料)。
月別アーカイブ: 2015年6月
歴史は書き換えられるもの
2か月ほど前から、歴史学の本を、続けて読みました。まずは、川北稔著『私と西洋史研究ー歴史家の役割』(2010年、創元社)。それに触発されて、福井憲彦著『歴史学入門』(2006年、岩波テキストブック)。そして、E・H・カーの『歴史とは何か』(邦訳1962年、岩波新書)を再読。さらに、谷川稔著『十字架と三色旗ー近代フランスにおける政教分離』(2015年、岩波現代文庫)です。
『私と西洋史研究』は、たまたま本屋で見つけたのですが、川北先生が高校の先輩なので、読んでみようと思ったのです。内容は、玉木俊明・京都産業大学教授が聞き手となって、川北先生の研究生活を回顧した本です。ところが、読んでみると先生の経験談とともに、歴史学の意味と役割がこの半世紀にどう変わってきたかが語られています。私は、歴史学はそんなに変化するものではないと思っていたので、先生の記述に眼を開かされました。
・・・私の親友で都出比呂志君という考古学者がいます。阪大で私をずっとサポートしてくれた人で、われわれの世代ではピカ一の考古学者です。日本の古代国家の成立にかんする彼の学説がありまして、これはもうずいぶん前に彼が唱えたものなんですが、もう何十年にもなるのだから、とっくに崩れていないといかん。「だけど、川北さん、崩れへんねん。これは何かおかしい」と彼は言うんです。
僕も、ちょっと口はばったいけれども、「帝国とジェントルマン」とか言いだして、帝国史の研究会とか生活史とかいろいろやって、ある時期まではずいぶん発展して、けっこう皆さんに認めてもらうということができました。しかし、「帝国とジェントルマン」というのはひとつのシェーマなのだから、どこかで崩れるはずのものだと思っています。大塚史学というものは・・・(p201)。この項続く。
今年も生きていました、近所のカエル
このホームページを長く愛読してくださっている方は、覚えておられるでしょう。我が家の近くに出没する、大きなカエルです。最近では、2014年6月6日。
今日夜、雨の中を傘を差して帰ってきたら、いました。アスファルト道路の真ん中です。握り拳ほどあるので、すぐわかります。このままだと車にひかれるので、道ばたのおうちの方に誘導しました。Tさん宅は庭木があるのですが、玄関の石段が高くて、何度跳んでも乗り越えられません。仕方なく、反対側のAさんちの庭に誘導しました。しかし、また道路に出てきそうです。いつもながら、どこの庭で生息しているのか、不思議です。
会計帳簿が変える世界の歴史、2
『帳簿の世界史』第13章は、「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」です。
大恐慌をきっかけに、アメリカでは、グラス=スティーガル法を作り、銀行業と証券業の兼業を禁止します。また、証券取引委員会(SEC)が設置されます。
1975年にSECは、「全国的に認知されている統計的格付け機関」を制度化し、ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチの3社を指定します。この3社が、企業や国家の債権格付にお墨付きを与えたのです。ところが、その監査法人が、顧客である会社の監査とともにコンサルティングを行います。そこに癒着が生まれます。1999年には、グラス=スティーガル法の「銀行業と証券業の分離」規定も廃止されます。
エンロンの破綻により、粉飾決算に加担していたアーサー・アンダーセンが解散に追い込まれます。
・・・エンロンの一件で皮肉なのは、アーサー・アンダーセンが行った監査の一部は十分にまともだったことである。優秀な中堅クラスの監査担当者は、2001年に、エンロンの疑わしい取引と不正経理を明白な証拠とともに上司に告発した。ところが年間1億ドルのコンサルティング・フィーを失うことを恐れた幹部は、この告発を無視したのである・・・(p325)。
こんなことも起きます、仮設住宅の不適正利用
6月23日の岩手日報が、「居住実態のない仮設40戸。大船渡市、退去求める方針」を伝えています。
・・・大船渡市は22日の市議会本会議で、倉庫代わりに利用するなど居住実態のない仮設住宅が約40戸あると明らかにした。仮設住宅の集約と土地の明け渡しに支障が生じかねず、市は個別に訪問して退去を求める。最終的には法的措置も含めて検討する方針だ。
市は昨年6月、居住実態のない仮設住宅は約70戸とみられると公表。その後、仮設住宅の自治会、支援員からの情報や職員の訪問などで実態把握や退去の呼び掛けを進め、退去戸数を精査した・・・
残念なことですが、このような人もいます。すると、市役所の職員の仕事が増えます。