復興特区の課税特例の活用実績を公表しました。復興特区制度には、2つの仕掛けがあります。一つは、まちづくりの面的整備の特例です。もう一つは、今回紹介する産業振興です。公表資料を見ていただくと、この特例措置によって、どの程度の投資が行われ、雇用が生みだされたかがわかります。それによると、投資実績は1.2兆円、雇用実績は10万人です。そして、ほぼ計画通りに実績が上がっています。
復興庁では、何をしたかだけでなく、何ができたかを、公表するようにしています。しかもそれは、霞が関で何ができたか(予算を取った、通達を出した)ではなく、被災地で何ができたかです。
月別アーカイブ: 2015年6月
家族サービスという言葉
先日あるところで、指摘され批判されました。「家族サービスは大丈夫か?」というセリフです。
職場で仕事熱心な部下に対して、この言葉がでます。話している方(私)は、部下をいたわっているつもりです。でも、よく考えると、これは「夫は職場、妻は家庭」という固定観念に縛られた発言ですね。家族は、サービスする対象なのでしょうか。仕事を優先し、家庭は犠牲にしてもよいという発想からしか、出てこないセリフでしょう。という私も、家族サービスどころか夫や父親としての義務すら、果たしてきませんでした。すべてキョーコさんにお任せでした。今さら遅いですが、反省。
被災地の復旧と課題を伝える報道
6月27日の日経新聞が、福島特集を組み、ボランティアの活動を伝えています。
岩手県と宮城県では、当初の避難所での支援やがれき片付けが1年以内で終わり、その後は被災者の生活支援、まち作り支援に活動内容が変わっています。しかし、原発避難区域では、被災者がほかの地域に避難していること、また避難指示が続いている地域も多いことから、両県とは違った状況にあります。今後、避難指示が解除され、住民が戻ってきます。すると、片付けなどの作業が出てくるのです。この記事のように、ボランティアの活動状況とその必要性を伝えてくれることは、ありがたいです。
日経新聞は29日の「地域で克つ」でも、宮城県気仙沼市の挑戦を伝えてくれています。市の主要産業である造船と水産加工について、震災を機に会社の合併や工場の集約が進んでいます。生き残りをかけての挑戦です。そこに、わかりやすい数字が帯グラフで示されています。水揚げ量は震災前の8割、金額では9割まで回復しました。しかし水産加工品の出荷額は、震災前の6割です。これをさらに引き上げることが、町の復興に必要なのです。いつも書いていますが、インフラと工場を復旧しただけでは、売り上げも町の賑わいも戻りません。
何が復旧しつつあり、何が課題として残っているか。それを、客観的かつバランスよく伝えること。「風化させてはいけない」と叫ぶより、このような記事の方が、国民に実情を伝え、被災者を元気づけ、関係者に何をしなければならないかを知らせてくれます。ありがとうございます。
復興庁の評価と今後の期待、研究者の視点
季刊『行政管理研究』2015年6月号に、寺迫剛・研究員が「集中復興期間最終年の復興庁―司令塔機能から管制塔機能へ」を書いています。発災直後から現在までの政府の対応を評価し、また今後のあり方を提言しています。ポイントは次のようなものです。
阪神・淡路大震災の教訓を生かし、発災直後の初動対応がよく機能したこと。
被災者生活支援本部が、政策決定だけでなく政策実施まで踏み込んだことが、後に復興庁の機能につながっていること。
危機管理体制から、復興対策本部を経て復興庁へと、復興体制に時間がかかりつつも移行したこと。
当初の復興庁について、「査定庁」であるという地方に寄り添っていないという批判と、逆に「御用聞き」という中央政府としてのリーダーシップを発揮していないという相反する批判があったこと。その後、復興庁が司令塔機能を発揮していること。
今後は、司令塔から「管制塔」へ機能を変えることが望ましいこと、などが論じられています。
最後の管制塔機能は、被災自治体を様々な目的地へ行き交う多くの飛行機にたとえ、復興庁をそれらに自治体(飛行機)に最適なルートを提示する航空管制のイメージにたとえています。
・・・地方ではそれぞれの市町村によって目指す復興のかたちは多様であり、その進展の度合も多様である・・・復興庁は管制塔として、それぞれの目指す方向に応じて、各府省の制度的枠組みを組み合わせて最適なルートをを示す。すでにタスクフォース方式により復興政策を総合的かつ加速化するルートが各政策領域に整備されており、「新しい東北」事業により今後も多くの新たなルートが開拓されていくであろう・・・
ご関心ある方は、ぜひお読みください。
組織の不正隠し
先日書いた「会計帳簿が変える世界の歴史、2」で、正確な会計とその公表が会社や国家にとって必須だと書き、他方で不正が後を絶たないことを書きました。日本を代表する企業である東芝の不適切会計(損失の過少計上など)が問題になっています。6月22日の日経新聞「経営の視点」で、中山淳史編集委員が、次のような指摘をしています。
・・・組織としては何重にもチェックする構造になっている。東芝はカンパニー制を採用し、それぞれ最高財務責任者がいる。その下の工場や事業所にも経理部がある。つまり、事業所経理部→カンパニー経理部→東芝経理部、さらには監査法人、取締役会と何か所も関所があるが、「現場が『見積もりは正しい』と主張すれば、反証は難しい」という・・
・・・だが、不思議な点がいくつかある。東芝だけになぜこうした問題が生じたのかだ。さらには「内部告発」とされる問題表面化の発端だ。東芝には内部通報制度があるが、最初に動いたのは金融庁だった。社内での報告体制に構造的問題はなかったか・・・
また、東洋ゴム工業では、建物の免震ゴム性能の偽装が問題になっています。こちらでは、経営陣が何度も性能不足の報告を受けながら、公表や出荷停止を遅らせていたことが明らかになりました。不正を防ぐはずの品質保証部門もデータを改ざんしていたとこのとです(6月23日、日経新聞)。
部下からの問題点の指摘を吸い上げる仕組み、あるいは組織の問題点を見つける眼、そしてそれを隠さず是正する決断。民間企業に限らず行政組織でも、管理職の大きな責任です。何度もお詫びの会見を経験した私にとって、他人ごとと思えません。