復興事業地方負担議論

5月13日読売新聞の社説は、「震災復興事業 やむを得ぬ自治体の一部負担」でした。私たちの考え方に理解を示していただき、ありがとうございます。もっとも、被災地の地方新聞では、私たちの方針に対し、かなりきつい批判の記事も書かれているようです。
事業者の立場からすれば、なるべく負担は少ない方がよいでしょう。「負担はある方がよいですか、ない方がよいですか」というような問を立てれば、多くの人が「ない方がよい」と、答えるでしょう。
しかし、復興事業につぎ込んでいる国費は、国民の負担です。前期5か年の事業の財源を捻出するために、所得税に2.1%の上乗せをしています。これは25年間続きます。あわせて住民税は、1,000円の上乗せを10年続けます。
納税者に納得をしてもらわないと、復興事業は続けることはできません。「負担はある方がよいですか、ない方がよいですか」という問には、「その財源はどうしますか」という問が、あわせて必要なのです。

また、高台移転や公営住宅建設などの復旧・復興事業には、今後とも地方負担を求めていません(このような例も)。地方負担を求めようとしているのは、例えば内陸部の道路整備や橋の耐震補強です。復興に関連しますが、発災以前から計画されていたような事業です。これは、被災しなかった地域との公平性を考えれば、全額国費は理解が得にくいと思います。
引き続き、関係者の理解を求めるために説明を続けます。その際には、納税者も念頭に置く必要があります。

予想以上の復興の進展、新しい段階へ

昨日、前期5か年の総括をしたことを書きました。地震・津波被災地では、後期5か年内での復興の完成が見えてきました。特に見ていただきたいのは、「資料1ポイント」のP7です。住まいの確保に関する事業(公営住宅や高台移転の宅地造成など)は、今年度中に64市町村において完了予定です。残る市町村も、平成30年度までには完了する予定です。あと3年です。
この4年間を振り返ると、よくここまで来たなあと思います。発災直後は、復興を考えるどころか、今日明日の生活支援(支援物資輸送、避難所の環境改善、被災者の把握)を考えることで、精一杯でした。必要な仮設住宅の建設も膨大で、いつになるか悩んでいたくらいです。その頃のことを思い出すと、感慨無量です。私以上に、被災者の方々や被災自治体の方々の方が、思うところがあると思います。関係者のご努力と協力のおかげです。ありがとうございます。
もちろん、完成までには、まだ時間がかかります。しかし、新しい段階になりつつあることは、間違いありません。
他方、原発被災地では、なお帰還の見通しが立たないところが多いです。これにも、さらに力を入れる必要があります。

復興、後期5か年の事業計画。その考え方

今日、集中復興期間(前期5か年)の総括と、平成28年度以降(後期5か年)の復旧・復興事業のあり方について、復興庁の考え方を発表しました(資料)。簡単には、資料1「ポイント」をご覧ください。
1 集中復興期間の総括について【P1】
・集中復興期間においては、国民に負担をお願いしつつ、25兆円を超える財源フレームを策定したことをはじめ、前例のない幅広く手厚い措置を講じてきました。
・25兆円の使い道はP5。住宅再建と復興まちづくりに10兆円、産業となりわいの再生に4.1兆円、被災者支援に2.1兆円,原子力災害からの復興と再生に1.6兆円、震災復興特別交付税等に4.6兆円などです。
・その結果、復興は着実に進展し、復興事業の完了に向けた目途が立ちつつあります。例えば、P7。地震津波被災地では、少なくとも住まいの確保に関する事業は、今年度中に64市町村において完了予定で、残る市町村においても平成30年度までには完了する予定です。
2 平成28年度以降の復興のあり方について【P2】
・このことを踏まえ、28年度以降の復興のあり方を検討しました。
・総理からも指示をいただいたとおり、新たなステージにおいて、被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるものを目指していく必要があります。そのために、名称については、平成28年度以降5年間について、「復興・創生期間」と命名しました。
・後期5か年では、福島を除き一刻も早い復興完了を目指します。まずは住宅再建を加速し、一刻も早く恒久住宅を確保します。その上で、心の復興など復興のステージの進捗に伴う新しい課題に的確に対応します。産業・なりわいの再生にも、官民連携を一層強化し取組みます。
3 28年度以降に復興特会で実施する事業【P3】と、自治体負担について【P4】
・これまで復興特会で実施してきた事業を再度精査し、「引き続き復興特会で実施する事業」、「一般会計等に移行して実施する事業」、「27年度で終了する事業」に分類しました。
・自治体負担についても、その方針を取りまとめました。
a 被災者支援、災害復旧、高台移転といった復興の基幹的事業や、原災由来の事業については引き続き全額国費で行う。
b 一方で、復興に資する事業でも、地域振興や防災といった全国共通の課題への対応との性格も併せ持つ事業については自治体負担を導入する。ただし、自治体負担を求める程度については、全国で行われている一般事業に比べて十分に軽減されたものとし、被災自治体の財政負担に配慮する。
4 今後の進め方
今後、今回公表した考え方を被災自治体に説明するとともに、意見を伺い、自治体負担の具体的水準などを定めます。また、事業規模を整理し、その上で、財源について見通しを付けることが必要です。これらについて、6月中に決定したいと考えています。

国民の関心、世論調査

NHKの世論調査(5月8日~10日)結果です。6つの政策課題を挙げて、国が今最も力を入れて取り組むべきだと思うことについて、「社会保障制度の見直し」が24%、「景気対策」が20%、「財政再建」と「原発への対応」が共に13%、「外交・安全保障」が12%、「東日本大震災からの復興」が10%で、復興が6番目に入っています。国民の関心は高く、ありがたいことです。

住民の話し合いで移転した町、岩沼市玉浦西地区

読売新聞は、毎月11日に、復興の特集を組んでいます。5月11日は、「玉浦西、集団移転」でした。宮城県岩沼市では、津波被害に遭った沿岸部6集落を、集団移転して1か所に集めました。これが「玉浦西地区」です。 農地を2メートルかさ上げし、20ヘクタールの宅地を造成しました。ここに、約千人が移住します。
住民が話し合い、移転計画をまとめました。それには、1年半もの時間が、かかりました。しかし、工事を始めると、この方が他の地区と比べて、完成は早かったのです。しかも、住民の満足度も高く、防災集団移転の成功例となっています。もちろん、住民の意見が、すべて実現したわけではありません。
すでに8割の世帯が引っ越しを終え、地区内にスーパーマーケットが開店する7月に、まちびらきが行われます。私も、先月視察に行きましたが、きれいな戸建て住宅が並んでいます。しかも、随所に気配りと工夫がしてありました。
記事をお読みください。写真入りで、わかりやすく解説してあります(インターネットでは、読めないようです)。