4月2日の朝日新聞が、昨年4月に避難指示が解除された田村市都路地区で、半数以上の住民が帰還したか今月末までの帰還を予定していると、伝えています。「故郷に明かり、再び。帰還、住民の半数以上。福島・都路、避難指示解除1年」
・・東京電力福島第一原発事故で国が出した避難指示が昨年4月1日に初めて解除された福島県田村市都路地区。帰還状況を朝日新聞が調べたところ、半数以上がすでに帰還したか今月末までの帰還を予定していることがわかった。昨年4月末と比べると、世帯数で2倍、人数で3倍にのぼる・・
月別アーカイブ: 2015年4月
わかりやすいフランス現代思想史
岡本裕一朗著『フランス現代思想史』(2015年、中公新書)に、挑戦しました。2か月も前のことです(すぐに読み終えたのですが、このページに書くのが遅くなりました)。構造主義、ポスト構造主義、ラカン、バルト、フーコー、デリダ・・・。かつて、手にとっては、投げ出していました。新書版で紹介してもらえるなら、読めると思い、取っ組んでみました。読み通すことができました。
冒頭、「ソーカル事件」が紹介されています。
・・今日、フランス現代思想史を書こうとするとき、避けて通れない問題がある。いわゆる「ソーカル事件」と呼ばれるもので、ニューヨーク大学の物理学教授アラン・ソーカルがしかけたイタズラだ。1995年に、ソーカルは「著名なフランスやアメリカの知識人たちが書いた、物理学や数学についてのばかばかしいが残念ながら本物の引用を詰め込んだパロディ論文」を作成し、現代思想系の『ソーシャル・テクスト』誌に投稿した。ところが、このインチキ論文は、何と掲載されてしまったのである・・
・・引用された文献の多くが、フランスの現代思想家たちの文章だったからである。今まで、フランス現代思想は「難解」だからこそ崇拝されてきたのに、実際にはむしろ、「ばかげた文章とあからさまに意味をなさない表現に満ちている」わかったのだ・・
これで、安心しました。私が理解できなくても、頭が悪かったのではないようです。翻訳が悪いのでもないようです。
著者は、勇気がありますね。大学教授には、自分が欧米で勉強したことを日本に輸入し、いかにそれが良いものかを売る「崇拝者」であり、「輸入代理店」の方もおられます。このように、客観的な評価を紹介した上で、解説と評価を述べるのですから。ソーカル事件は以前聞いて知っていましたが、このようにフランス現代思想史の解説書の1ページ目に出てくると、それが与えた影響や位置づけがわかります。
フランス現代思想のように、難しいことを新書版で紹介することは、とても難しいことです。よほどの理解者でないとできません。しかし、私たち素人には、入門書として、また概要を知るためにはありがたい手段です。「私も、フランス現代思想に手こずった」という方や、「なにか高尚なものだと思っていたけど、読めなかった」という方には、お薦めです。
拙稿。新しい組織を作って、これまでにない課題に取り組む
月刊誌『地方財務』2015年4月号の拙稿「復興の現状と課題―未曾有の事態へどのように対応してきたのか」は、次のような構成になっています。
「第一章 5年目を迎える復興」は、復興庁資料でも公表しているとおりです。「第二章 復興庁をつくる」が、これまでにない課題にどのように対応したか、そしてそのためにどのように組織を作ったかです。
それを、「明快な目標」「効率的な組織」「関係者の理解」の3つに分けて解説しました。私の苦労の整理です。「明るい官房長講座」あるいは「明るい総務部長講座」です。新しい組織作りに悩んでおられる方や、これまでにない課題に取り組む方に、お役に立つと思います。
一 5年目を迎える復興
1 天災と原発事故、異なる復興
2 現状と課題
(1)住宅再建とまちづくり
(2)産業と生業の再生
(3)被災者の健康と生活の支援
(4)原発事故からの復興
(5)新しい東北の創造
3 今後の見通し
(1)復興の完了を目指して
(2)原発事故処理
二 復興庁をつくる
1 これまでにない課題にどう取り組んだか
(1)明快な目標=優先順位の設定と工程表の作成
①優先順位を付ける、②事態は変化する、③司令塔機能
(2)効率的な組織=組織作りと社風作り
①分担を明らかに、②縦割りと横串、官房と庶務、③現地でのワンストップ処理、④柔軟な変更、⑤職員のやる気、⑥社風をつくる、⑦上司の役割、部下の仕事
(3)関係者の理解=意思統一と国民の理解
①同じ方向を向いてもらう、②現場を知ってもらう
2 新しい取り組み、新しい手法
(1)政府が行った新しい取り組み
(2)企業やNPOとの協働
新年度
昨日は4月1日、新年度が始まりました。各職場で、新入社員を迎えたことでしょう。また、新入生も希望に胸を膨らませて、入社式に臨んだことでしょう。私にも、入学や入省式がありました。地下鉄の中で、一見してそれとわかる若者(男女)を見かけました。「がんばれよ」と、声をかけたくなります。これから、今まで知らない世界を知り、いろんな苦労をすることでしょう。でも、先輩たちも通ってきた道です。そんなびっくりすることは、ありません。でも、新しいスーツの上着のしつけ糸は、取った方が良いよ(笑い)。
復興庁では大卒新採を採用していませんが、人事異動でたくさんの職員を送り出し、また新しい職員を迎えました。復興庁で苦労した職員たちには、この経験を糧に、新しい職場で頑張って欲しいです。元の職場では経験できない、仕事や人との交流ができたと思います。新しい職場で、復興の応援団になってください。新人に対しては、今日、オリエンテーションがありました。私も、復興庁職員として持って欲しい心構えを、お話ししました。一日も早く仕事に慣れて、戦力になってください。そのためには、現地を見て、被災者の立場になって考えることです。復興庁職員の仕事の原則やあり方は、至極簡単です。被災者の立場に立つことです。もちろん、憲法の範囲内であり、財源は国民の税金です。限界は、国民に対して、説明できるかどうかです。
月刊誌の復興特集
地方自治体向けの月刊誌『地方財務』(ぎょうせい)2015年4月号に、「東日本大震災から4年―復興へのあゆみと地方創生のヒント」を、特集してもらいました。次のような内容です。
1 復興の現状と課題―未曾有の事態へどのように対応してきたのか 小生執筆
2 福島復興の加速化―地震、津波、原子力発電所事故の三重災害からの復興 田谷聡・福島復興局長執筆
3 被災自治体への財政支援及び人的応援 海老原諭・復興庁参事官執筆
4 「新しい東北」の創造―産業・生業の再生、コミュニティ形成への新手法 小川善之・復興庁参事官補佐執筆
5 企業の力で産業・コミュニティを復興する 藤沢烈さん執筆
長尾編集長の指示により、自治体職員向けに構成しました。そこで、4年経った時点での復興の現状と課題だけでなく、私の原稿では、これまでにない課題にどのように対応したか、そしてどのように組織を作ったかを書きました。岡本全勝と職員たちの、この4年間の努力=技と作品=苦労の記録です。これは今後、霞が関で新しい課題について新しい組織を作る際の教科書になるでしょう。同様に、地方自治体の幹部にも、参考になると思います。ポイントは、追ってこのページでも紹介しましょう。
また、地方での現在の第一の課題である地方創生に関して、被災地で進めている「新しい東北」という地域振興の取り組みを紹介するとともに、行政だけではできない部分を民間の力をどのように活用するかを書いてもらいました。
地方自治体や国の官庁で、必ず役に立つと自負しています。書店では並んでいないので、出版元に問い合わせてください。あるいは、県庁や市町村役場(企画や財政部局、図書館)には必ず1冊はありますから、借りて読んでください。