4月19日の読売新聞1面コラム「地球を読む」、山崎正和さんの「科学技術万能論」から。
・・・だが一方、現代の言論界には、正反対の未来論も台頭していて、こちらも無視できない影響力を見せているようである。名づければ「科学技術万能論」、科学の急速な進歩が人類の無限に近い繁栄を保障するという主張だが、現に相当の雄弁さでマスコミをも巻き込んでいる・・・
・・・新理論の中心人物にレイ・カールワイルという著者がいて、その代表作が『ポスト・ヒューマン誕生』という題で邦訳され、すでにかなりの増刷を重ねている・・20世紀後半以来、遺伝学、ナノ技術、ロボット工学が爆発的な発展を遂げ、進歩の速度から見て2040年ごろには文明に革命をもたらし、人間そのものを改造するだろうというのである・・
・・自信満々の著者だが、興味深いことに最後にきて、自分の立場について一抹の不安を漏らすのである。巻末に近い注のような一節で、彼は「なぜ自分が特定の人間かわからない」と告白する・・
人間を「操作する対象」「管理する対象」とすると、操作の主体であるべき自己が、居場所を失います。誰が主体で、誰が客体なのか。詳しくは原文をお読みください。