岩波書店のPR誌『図書』2015年4月号川北稔先生の「近代世界システムと幻の耕地」の続きです。近代の成長をイギリスとアメリカが摘み取ったと同様に、東アジア台頭の成果を中国が摘み取るという見方に続いて、次のように書いておられます。
・・・近代システムの本質などということを気にせず、近代と、近代のあとにくるかもしれない世界―それどころか、近代以前の世界も―が、ほとんど同じような性格のものだと無意識に仮定しがちな歴史観からすれば、そのようにもいえるかもしれない・・・
まさにこの点です。日本は、19世紀後半から20世紀にかけて、めざましい成長を遂げました。しかしそれは、西欧が切り開いた近代工業システムという枠組み(パラダイム)においてです。「追いつけ追い越せ」というスローガンは、その限界を示しています。日本が、イギリスやアメリカがつくった経済・社会・政治の構造に代わるものを、提示したのではありません。
では、現時点で成長著しく、東アジア台頭の成果を摘み取るとして、中国さらには東アジアは、西欧がつくった近代工業システムに代わるもの、あるいはそれを越えるものを提示しているでしょうか。17世紀までの中国・中華文明は、西欧文明に対峙するだけのものを持っていました。しかし、21世紀の中国、日本、そして東アジアは、西欧近代文明に代わる「新しい文明」を、提示していないようです。
先生の主張は、原文をお読みください。川北稔先生は、ウォーラーステインの近代世界システムを日本に紹介したことで有名です。その視点からの分析です。ところで、先生は、私の高校の大先輩です。