落合淳思著『殷―中国史最古の王朝』(2015年、中公新書)を紹介します。歴史で習った、中国古代の王朝です。この本では、発掘された甲骨文字から、当時の統治を再現しています。牛の肩胛骨や亀の甲羅に彫られた甲骨文字は、王が占いに使った物です。いろんなことを占ったので、ある意味で王朝の記録集になっています。それにしても、占いの甲骨文字から歴史を復元するとは、すごい作業です。
未来を予測しただけでなく、都合のよい結果になるように操作したり、結果が出てからそれに合うように改ざんされたものもあるのだそうです。王の権威付けに、利用されていたのです。
酒池肉林に耽る紂王の伝説などの逸話は、『史記』をはじめとする後世の創作だそうです。殷は、今から3千年前の話です。史記が書かれたのが2千年前ですから、当時でも千年前の話だったのです。現在に引き直すと、藤原道長(966~1028年)の頃のことを書いていることになります。しかし、王の系譜など、結構正しく伝えられています。千年の間、どのようにして伝えられたのでしょうね。はじめは口伝で、途中から竹簡などに記録されたのでしょうが。権威ある組織や集団が記録保存しないと、千年間は難しいですよね。遺族が「宋」という国を許されたので、ここが伝えたのでしょうね。
この本では、殷を継いだ周王朝が、都合のよいように歴史を改ざんしたと思われることも指摘しています。推理小説のようなところもあります。