『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2014年11月号、リチャード・ハース氏の「解体する秩序-リーダーなき世界の漂流」から。
・・アメリカの覇権は廃れつつあるが、バトンを引き継ごうとする国はなく、今後、現在の国際システムはさらに雑然としたシステムと化していくだろう。国際ルールを守るのではなく、独自の利益を重視する非常に多くの国がパワーセンターにひしめき合い、アメリカの利益や優先課題が配慮されることもなくなる。これによって新しい問題が作り出され、現状の問題を解決するのもますます難しくなる。要するに、ポスト冷戦秩序は解体しつつある。秩序の崩壊はパワーと意思決定メカニズムが分散化していること同様に、アメリカがもはやまともに国際行動を起こさないと考えられていることに派生している。いまや問うべきは、世界秩序が今後も解体していくかどうかではない。いかに迅速に奥深く解体プロセスが進展するかだろう・・
ハース氏は、「なぜ秩序が解体しつつあるかのか。そこには構造的理由と意思と決断に派生する理由がある」として、アメリカ、オバマ政権の言動を批判します。イラク、エジプト、リビア、シリアで、発言しながら中途半端な行動しかしない大統領に責任があるというのです。
・・(大統領の)レトリックと行動とのギャップが、アメリカの信頼性を損なったことは言うまでもない・・
・・要するに、3つのトレンズが重なり合うことで、秩序の解体が起きている。国際的パワーが非常に多くの、しかも多様なアクターに分散していること。アメリカの政治・経済モデルのソフトパワーが、大きく低下していること。そして、中東政策を含むアメリカの政策上の選択が、ワシントンの脅威をめぐる判断、約束に関する信頼性への疑問を高めてしまっていることだ。相当大きなパワーを温存しているにも関わらず、アメリカの影響力はいまや失墜している・・
・・秩序の崩壊はパワーと意思決定メカニズムが分散化しているだけでなく、アメリカがネガティブに捉えられ、本気で国際行動を起こさないと考えられていることに派生している。いまや問うべきは、世界秩序が今後も解体していくかどうかではなく、いかに迅速に奥深くそのプロセスが進展するかどうかだろう・・
他方、同じ号で、エリザベス・エコノミー氏が「すべての道は北京に通ず」で、次のように指摘しています。
・・習近平・中国国家主席は「中華民族の偉大なる復興」というシンプルながらも、パワフルなビジョンを明確に表明している・・一方で習近平のビジョンは彼の危機感も映し出している・・グローバルな経済大国としての地位を確立しながらも、その実力に見合うような影響力を行使できていない。リビアとシリアの混乱への対応を怠り、隣接するパートナーであるミャンマーと北朝鮮が政治的変化に翻弄されるのを傍観している。この事態を前に、専門家の多くは、中国は包括的な外交戦略を持っていないのではないかと考えるようになった・・