先日、スウェーデンが移民の受け入れ国となっていることを紹介した際に、もはや高福祉・高負担の国でないことも紹介しました(EU、難民の受け入れ。10月14日)。11月3日の日経新聞オピニオン欄に、大林尚・編集委員が「今は昔、高負担スウェーデン。「成長あっての財政」根づく」で、詳しく解説しておられました。
スウェーデンの国民負担率(税負担+保険料)は58.2%、フランスの61.9%より低いのです。ドイツが51.2%、日本は41.6%です。日本が低いのにはからくりがあって、このほかに財政赤字=子や孫への負担の先送りが10.3%分あります。それをたすと潜在的国民負担率は51.9%になり、ドイツの52.2%と並びます。フランスは同様に計算すると、68.9%にもなります。ところがスウェーデンは、国民負担率も潜在的国民負担率も同じ58.2%です。これは将来世代に赤字を残していない、現世代の医療や教育サービスは今の世代が負担しているのです。まあ、これが当たり前の姿であって、子や孫にツケを回している日本が異常なのです。
スウェーデンは、付加価値税(消費税)が25%、所得税+住民税の最高税率は56.6%、国民の96%が税負担をしています。日本では、所得税を払うのは国民の半分以下です。税は政府に取られるものではなく、投資のようなものとの考えなのだそうです。世論調査によると、信頼されている役所の順位が、消費者庁、地理院に次いで、国税庁が3番目です。税と行政サービスのあり方について議論を重ね、そして国税庁も納税者へのサービスを向上させて、このような結果になったのでしょうね。さらに、国税庁のシンボルマークが載っていますが、扇風機のような図柄です。吸引機だそうです。すごく直接的な絵ですね(苦笑)。
日本ではかつて、「税金は少ない方が良い」とか「大企業が負担すれば良い」といった、素朴な議論がまかり通っていました。前者に対しては「じゃあ、年金は誰が負担するの?」、後者には「大企業が税金の低い国に逃げていきますよ」と聞きたいです。今回、税と社会保障が一体的に議論され、行政サービスを続けるためには、税負担を上げるしかないことがようやく理解されてきました。