朝日新聞10月21日オピニオン欄、内田樹さんのインタビュー「カジノで考える民主主義」から。カジノを含む統合型リゾート開発を推進しようという法案(カジノ推進法案)について。
・・僕は別に賭博をやめろというような青臭いことは言いません。ただ、なぜ人は賭博に時に破滅的にまで淫するのか、その人間の本性に対する省察が伴っていなければならないと思います。
賭博欲は人間の抑止しがたい本性のひとつです。法的に抑圧すれば地下に潜るだけです。米国の禁酒法時代を見ても分かるように法的に禁圧すれば、逆にアルコール依存症は増え、マフィアが肥え太り、賄賂が横行して警察や司法が腐敗する。禁止する方が社会的コストが高くつく。だったら限定的に容認した方が「まし」だ。先人たちはそういうふうに考えた。
酒も賭博も売春も「よくないもの」です。だからと言って全面的に禁圧すれば、抑圧された欲望はより危険なかたちをとる。公許で賭博をするというのは、計量的な知性がはじき出したクールな結論です・・
「十分な依存症対策を取れば、カジノ法案に賛成ですか」という問に対して。
・・賛成できません。法案は賭博を「日の当たる場所」に持ち出そうとしている。パチンコが路地裏で景品を換金するのを「欺瞞だ」という人がいるかもしれませんけれど、あれはあれで必要な儀礼なんです。そうすることで、パチンコで金を稼ぐのは「日の当たる場所」でできることではなく、やむをえず限定的に許容されているのだということを利用者たちにそのつど確認しているのです。競馬の出走表を使って高校生に確率論を教える先生はいない。そういうことは「何となくはばかられる」という常識が賭博の蔓延を抑制している。
賭博はあくまでグレーゾーンに留め置くべきものであって、白昼堂々、市民が生業としてやるものじゃない。法案は賭博をただのビジネスとして扱おうとしている点で、賭博が分泌する毒性についてあまりに無自覚だと思います・・
このほかにも、メディアの責任について鋭い指摘をしておられます。原文をお読みください。