読売新聞連載「時代の証言者」西尾勝先生、10月4日の「思いがけない活動延長」から。
・・「省庁再編で巨大官庁が生まれるといわれるので、国の仕事を自治体に移譲する勧告に再挑戦して欲しい」。これが、橋本首相の地方分権推進委員会に対する追加要請でした。しかし、それからが大変でした。
国の仕事を自治体に移譲するとなれば、当時の建設・運輸・農林水産の3省が行う道路・河川・ダム・港湾・農業構造改善という公共事業に的を絞らざるを得ない。私はそう考えました。ところが、抵抗が強かったこの3省は、今度は国会議員に訴えたのです。
当時の自民党の政務調査会が動きました。各省と密接につながっている部会ごとに、地方分権改革対策会議などというような委員会を設置した上で、全体を統括するという体制を築き上げたのです。ここが抵抗の拠点となって、各省の官僚には「分権推進委員会からの出席要請には応じるな」と指示を飛ばす事態に発展していきました。
「国会の先生方に止められているので・・・」各省の官僚たちはそう言って、折衝に出てこなくなりました・・
・・首相の発言は非常に重く、官僚に強い影響力を及ぼすことを私は実感していましたが、橋本首相は結局、公共事業の移譲に反対する与党議員を束ねるまでの力は持っていなかったのかと思い知らされたわけです・・