近藤和彦著『民のモラル―ホーガースと18世紀イギリス』、18世紀イギリスでしばしば起きた食糧一揆が、民衆による「法の代執行」である点を解説するくだり(p163~)から。
・・食糧一揆といえば、飢え、自暴自棄になった群衆が業者や倉庫を襲う「暴動」という紋切り型のイメージがあるが、しかし、18世紀の食糧一揆は餓死しそうな貧窮から生じたのではない。そもそも本当の飢餓状態にあれば、わたしたちもニュース映像で見ているとおり、病み、放心して横になるか、せいぜい祈るしかないだろう。私たちの注目している一揆勢は元気で、憤り、自ら集団的に行動する「正当性の拠りどころ」をもっていたように見える。一面で統治権力のありかた、地主・商工業者などの姿勢、あるいは世論のありかたも重要であるが、同時に民衆のおかれた生活条件や一揆の規律、〈制裁の儀礼〉としての性格に注目する必要もある・・