仕事の段取り

私たち官僚にとって、「仕事の段取り」は非常に重要です。目標を与えられた場合、あるいは目標を立てた場合に、いつ何をして、目標を達成するかです。内容をサブ、段取りをロジと呼ぶことがあります(もっとも、ロジは会議などの段取りの準備を指すことが多いです)。
その際に、内容を固めて上司の了解を得ることと同様に、そのほか誰に了解を取るか、関係者対策も重要です。マスコミには、どのように公表するか。マスコミに聞かれたらどう答えるかといった想定問答作り。関係者には、事前事後にどのように報告、根回しするかなどです。
自然科学の大発見と違い、私たちの仕事の多くは、関係者に納得をいただくことが「成果」です。どんなに良い内容でも、上司、関係者、マスコミ、国民に、理解と賛同を得られないと落第です。
段取り(の準備)には、いくつかのものがあります。まずは骨太の粗々したもの、いつ何をする必要があるかを確認することです。これは紙1枚。「工程表」と呼ばれます。次に、それをより詳しくしたもので、それぞれの段階で、誰が何をするか。対外的には、何をもって、誰が誰に根回しに行くか。役割分担表です。責任者たちでこの段取りを共有するために、漏れ落ちがないか確認するために、そして作業員が間違わないように、紙にする必要があります。
作戦本部長または参謀長は、この工程表と役割分担表を作ること、あるいは部下に作らせた原案を加筆修正することが仕事です。毎年の定例行事(予算、法案作成など)なら、前例があるのでそれを参考にします。しかし、初めての課題なら、一から作る必要があります。
私は最近の自分の役割を、「回転寿司ベルトコンベア」と呼んでいます(笑い)。
皿の上には、さまざまな寿司(仕事)が乗るのですが、それは部下が考えてくれます。私はその皿(できあがった説明資料)を、適切な時期に必要な人に届けること、届け先と時期を間違わないように指示を出すことが任務です。
これは、偏差値よりも、経験の多さと人間関係の熟知が、ものを言います。「俺は聞いていない」と言われないように、また「あの人に事前に報告をすると、新聞記者に漏れるわなあ」とか。
そして、発表や会議がうまく行ったときに、次に忘れてはならないのが、報告とお礼です。しばしば、これを忘れます。うまくいったので、うれしくなって打ち上げに行ってしまいます。そこにたどり着くまでに、陰で汗をかいてくださった人たち、また「俺はこれについては関係者だ」と思っている人に、まずは電話で第一報を入れ、お礼を言う必要があります。
いくつも失敗をした先輩の、反省談だと思って読んでください。しかし、このようなことは、失敗してみないとわからないのでしょうねえ。

民間の復興支援、小口の寄付を集めて力にする

大阪コミュニティ財団が、被災地支援をしています。この財団は、企業や一般の方から寄付を集め、目的ごとに基金を作って、支援する仕組みです。「マンション型基金」「基金の集合体」と表現しています。
一人ひとりの寄付額は小さくても、集まると大きくなります。また、個人ではどこに支援してよいかわからない場合に、この財団がその事務をやってくれます。
その基金の一つに、大震災の復興活動支援基金があります。8月1日に開かれた報告会では、「内職プロジェクト」「地域コミュニティ形成を目的とした生活支援事業」「コミュニティの新再生」「手仕事現地事務局設立」「空き店舗を活用した避難住民のビジネス・サロンを通した起業化・雇用創出支援」が報告されました。報告概要には、それ以外の援助先の事例も載っています。
企業や企業が主体となった基金による、被災地での復興活動支援もたくさんあります。その他に、このような多くの人から集めたお金で基金を作り、それを元手に支援してくださる例もあるのですね。ありがたいことです。
行政では手が回らない、また公金では支援しにくい活動を支援してもらえるので、その面でもありがたいです。
国も、阪神・淡路大震災の時に、細々とした活動に支援を行えるように、自治体に基金(金利運用型)を作りました。評価が高かったので、今回も、取り崩し型基金を作れるように、各自治体に交付税を配分しました。これも喜んでもらっているのですが、コミュニティでの事業支援は、お金だけではできません。ノウハウや人材による応援が必要なのです。

薄型テレビに

遂にテレビを入れ替えました。これまで見ていたのは、日本ビクターの1997年製です。もちろんブラウン管で、奥行きは40センチ以上ありました。
・・5年ほど前に、画面が暗くなり、修理に来てもらいました。配線の一部が弱くなっていたとのことで、修理してもらうと、またきれいに映るようになりました。その時の職員さんが、「このテレビを、大切にしてください。まだ当分、きれいに映るでしょう。この型が、日本で製造した最後のテレビです。その後は、アジアに生産を移しました」とおっしゃったのです・・と書いたのは、2008年4月27日でした。
アナログ放送が停止した際も、我が家はケーブルテレビなので、ブラウン管テレビでも何の問題もありませんでした(2010年3月6日の記事)。
我が家に来た人たちが、感心するやらあきれるやらの代物でした。私は、何の問題も感じなかったのですが。キョーコさんは、「全然明るさが違う」とのこと。遂に引退しました。古いテレビは、引き取ってもらうのにお金もかかりました。もっと問題なのは、テレビの上に並べてあった人形などの、置き場がなくなったことです(笑い)。このような家電は、耐用年数は10年ほどだそうです。17年も良く長生きしたものです。もっとも、私はニュースと「サザエさん」と「ダーウィンが来た」くらいしか見ないので。今日も、しょうもない話で、すみません。

与党第4次提言

今日8月6日、与党の復興加速化本部(大島理森自民党本部長、井上義久公明党幹事長)が、第4次提言を、総理に提出しました(NHKニュース)。
詳しくは、提言文章を見ていただくとして、前文で、趣旨が述べられています。
・・岩手・宮城両県をはじめとする地域は、明確に復興途上にある。様々な課題はあるものの、住宅建設の槌音が響き、地域に生活感がみなぎってきている。しかし、原子力事故災害に見舞われた福島県は、いまだ復旧の段階と言わざるを得ない・・
また、構成は目次のように、第1章が原発からの復興、第2章がその他共通事項になっています。
このように、津波被災地は計画ができ、工事は時間がかかりますが、目標が見えています。それに対して、原発被災地では、まだ放射線量が下がらず、事故が終わっていません。与党の第3次提言(平成25年11月)に基づき、早期に帰還できる区域、待っていただく人たち、新しい生活を選ぶ人たちの、3つに分けて支援をしています。しかし、まだまだめどが立っていません。第1原発の廃炉作業も、時間がかかります。除染も、中間貯蔵施設ができないと、はがした土砂を運び込めません。新生活を選ぶ方たちへの賠償支払いも、始まったばかりです。
政府も、それぞれに目標を立てて、事業を急いでいます。しかしこのように、与党において筋道を整理していただくことは、ありがたいことです。私たち復興庁(政府)とは別のチャンネルで、地元の課題を拾って、課題を提言してくださいます。総理の発言を受け、この提言に答えるように事業を進めます。(これまでの与党提言への取り組み状況

公的サービスの適正さの確保

8月3日の朝日新聞1面は、「保育園の企業参入、自治体が阻む 待機児童減らない一因」でした。
・・自治体が認可する保育園を企業が運営しようとしても、多くの市や町が「壁」を設けていることがわかった。政府が2000年に企業にも認可保育園を運営できるようにしたのに、社会福祉法人(社福)を優遇し、企業の運営を認めていなかったり条件を厳しくしたりしていた。保育料の安い認可保育園を希望しても入れない「待機児童」が、減らない一因になっている・・
・・認可保育園は約2万4千カ所あり、約9割を自治体や社福が運営し、企業は2%にとどまる。政府は2000年、自治体や社福に限っていた運営を企業にも開放したが、認可の条件などは市町村に任せている。
厚生労働省は5月、政令指定都市、中核市、待機児童が50人以上の市区町の計133自治体について、昨年10月時点の認可保育園の運営を認める条件をまとめた。これをもとに朝日新聞が取材したところ、半数以上の70自治体が企業参入に壁を設けていた・・
この記事を読んで、かつての規制緩和・民営化の議論を思い出しました。空港などの基本インフラについての、規制緩和・民営化の議論でした。
「空港や上水道など、国民生活に関わる重要なインフラを、外国の会社が買収したら困るではないか」という、懸念でした。しかしよくよく議論すると、空港や上水道事業の所有者が国内会社であれ外国会社であれ、きちんとした運営をしてくれないと困ることは同じです。「外国資本だから危ない」ということでは、ありません。運営会社の株式の過半数を日本人株主が持っていても、変な運用をされたら、同じです。
そのときの結論は、次の通り。
公的なサービスを提供する施設について、適正な運営を確保する必要がある。その場合、「所有者が誰か」とか、「運営主体が誰か」では、適切な運用は担保できない。そのためには、所有者や運営会社の国籍を規制するのではなく、「法律で運営規制をかけておく必要がある」ということでした。「所有規制」ではなく「運営規制」が重要なのです。入り口(提供主体)で規制するのではなく、出口(サービス)で規制するのです。
「社会福祉法人だから安心だ」とも「企業だから危ない」ともいえません。外国の宗教法人が実質的に運営する小中学校もあれば、企業が経営する病院もあります。質が高いので、それを選ぶ人も多いです。