5月22日の読売新聞に、「ニッポン人気、英語に反映」が載っていました。世界の英語の動向を調べているアメリカの調査会社によると、今年の流行語の暫定一位は、emojiです。そう、携帯メールでおなじみの「絵文字」です。日本語がそのまま、英語として通用しているのです。昨年12月には、オックスフォード英語辞典(OED)にも収録されています。「携帯」(keitai)は、4年前から載っているのだそうです。
近年は、漫画、アニメ、ラーメン、枝豆まで載っています。富士山、芸者、腹切りといった古典的日本文化でなく、新しいしかも生活文化が世界に広がっています。
記事に紹介されていた、寺澤盾著『英語の歴史』(2008年、中公新書)を読みました。どのようにして現在の英語ができあがったか、わかりやすく解説されています。なぜ、あんなに綴りと発音が違うのかも。
言葉は不思議なものですね、誰かに命令されるわけでもなく、みんなが使っているうちに、それが標準になる。母音も、誰も指示しないのに、大きな法則の下に時間をかけて変化します。それで、こんなに綴りとずれてしまいました。
さて、今後、世界の人の多くは、英語を話さなければ仕事にならないでしょう。国際語となってさらに普及するためには、綴りをなるべく発音に近づけてもらいたいです。nameを、ナメーと覚えた一人。
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不安定な現在の国際社会、理念の不足。2
先日、山上正太郎著『第一次世界大戦 忘れられた戦争』(2010年、講談社学術文庫)を読みました。今年は2014年、第一次世界大戦勃発から100年です。この本を読むと、人間は合理的ではないなあと、考えさせられます。もちろん、私たちは、その結果を知っている現時点から、過去を判断するからです。
戦争が始まる前、始めたとき、戦争中と、関係者はその時点その時点で「良い」と思う決断をしたのでしょう。結果を教えてあげたら、多くの人は「そんな結果になるのだったら、やめておいたのに」と、言うのでしょうね。この本の中でも、戦争を始めたドイツ皇帝が戦争に負けそうになったときに、敵方のロシア皇帝やイギリス国王の不誠実をなじったり、開戦に踏み切った首相ホルヴェーグが自己の責任を反省しています。戦争を始めた皇帝たちは、よもやロシア、ドイツ、オーストリア帝国がなくなり、地位を追われるとは思ってもみなかったでしょう。
戦争になるかどうかは別にして、国際政治には単一の責任者がおらず、また利害や意見を調整するシステムがありません。それが故に、関係者の意図がうまく交換されず、また調整されないときがあります。「相手は、こんなことを考えているかもしれない」「いや、そんな意図で言ったのではない」と。
また、過去の思考の枠組みで考えていると、社会の変化に気づかず、歴史の大きな流れを読み間違うことになるのでしょう。第一次世界大戦は、総力戦が出現し、国民の支持がないと続行できない、政体も維持できないことを明らかにしました。19世紀とは違う社会が、出現していたのです。政治指導者の認識と、社会や経済の変化がずれていると、うまくいきません。それは、第一次世界大戦の後処理の失敗にもつながりました。ドイツへの過酷な懲罰は、第2次世界大戦を引き起こしました。
アメリカとソ連が「仕切っていた」20世紀後半は、それなりに「秩序」と「安定」がありました。1991年、ソ連の崩壊で、「冷戦」という安定の時代が終わりました。「歴史の終焉」(フランシス・フクヤマ)とも言われましたが、それから20年後に待っていたのは、全く違った世界でした。
共産主義が終わり市場経済が世界を覆いましたが、別の「勢力」が、国際社会の不安定要因として台頭しました。西欧自由主義・民主主義とは違う、イスラムという文明と、中国という経済と軍事力を急速に増強したしかし独裁国家と、ロシアという未成熟な自由主義国家などです。
さて、安定を失いつつある現在を、20年後や50年後の後世の人は、どのように見てどのように記述するでしょうか。「混乱はさらに大きくなり、・・・」と書かれるのか、「その混乱の中、世界の指導者達は、××によって、新しい秩序を作り上げた」と書かれるのでしょうか。(参照、「1914年と2014年の類似」4月22日の記事)
潜水艦でのリーダーシップ、上官の命令が絶対の組織で部下のやる気をどう引き出すか
L・デビット・マルケ著『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』(2014年、東洋経済新報社)が、興味深かったです。
軍隊とは、上司の命令に部下が従う、トップダウン方式の典型例でしょう。アメリカ海軍も、当然そのような命令系統になっています。
著者が艦長を務める原子力潜水艦は、全長100メートル、乗組員135人、いったん出航したら半年間は戻ってこない、しかもそのほとんどは水中での隠密行動です。原子力機関、ミサイルや魚雷の扱いは、間違いが許されない高度な操作です。艦長の命令は絶対です。
しかし、上司の命令が全て、多くのことはマニュアルに書かれている、部下はそれに従うだけでは、士気は上がりません。著者は、部下に委ねるリーダーシップを取り入れようとします。しかし、前任の潜水艦で、一度挫折を経験します。そして、新たに乗船を命じられた潜水艦サンタフェは、乗員の質は悪く、関係者の間で有名な艦です。
彼が、どのようにして、部下にやる気を出させ、委ねるリーダーシップを成功させるか。そして、サンタフェは、平均以上の点数をとるほどに変わるだけでなく、最高点をとるまでに変わります。ご関心ある方は、お読みください。
危険な任務の命じ方。命令、要請、自発。2
これに関連して、かつて「公務員のスト権」について議論したことを、思い出しました。国家公務員と地方公務員は、ストライキが禁止されています。しかし、業務の内容を見たら、民間企業の中に、もっと国民生活に不可欠な部門=ストをされたら困る部門があります。
サービスの提供が停まると、個人の生活や社会の活動に大きな被害を及ぼすものです。たとえば、電気やガスの供給、銀行や通信、運輸のシステム、医療などです。そこで、公益事業については、ストをする場合に、事前の届け出が必要です(労働関係調整法)。医者の場合は、病人が来たら診察義務があります(医師法)。事前にストがあるとわかっておれば、国民も予定を立てて備えることができます。計画停電は、東日本大震災の直後に東京電力が実施しました。もっとも今の社会では、通信会社がストをして電話や電子メールが使えないとなると、大変なことになるでしょう。
しかし、もう一つ、より深刻な部門があります。危機管理や危機対応の部門です。例えば、ガス漏れを修理に行くガス会社の部門、電力会社の原発運転部門、民間病院でも救急部門などです。ガス漏れを修理に行く部門がストをしたら、ガス漏れがあったときに大災害を招きかねません。原発運転部門が予告どおりストをして、そのときに事故が起こったら、大変なことになります。このような場合の備え(法的規制)は、どうなっているのでしょうか。また、インターネット上でサイバー攻撃などを監視して、ソフトに穴があったらそれを防ぐ仕事をしているIT会社も、今や重要な危機対応部門です。
なお、冒頭に「公務員と比べたら」と書いたのは、これらの業務に比べて、××省の職員給与を計算する部門や統計部門などは、重要ではありますが、少々ストをしても国民生活には直ちには影響はないだろうということです。