税財政政策の理論と運用

石弘光著『国家と財政―ある経済学者の回想』(2014年、東洋経済新報社)が、勉強になります。石先生は、元・一橋大学の財政学の教授です。政府の税制調査会長などを務められました。学者として政策の現場でも活躍されました。
この本は、先生の学者としての半生を振り返りつつ、税財政の理論と実際がどのように変化してきたかを、テーマを建てて解説しておられます。日本の戦後から現在までの、税財政史でもあります。租税政策や財政政策は、早い時期から、学者が実務(政策の現場)に貢献した分野です。私たちは、教科書や専門書で税財政を勉強しますが、なぜこのような理論ができて、現実に運用されているか、その背景を学ぶと、より理解できます。
税財政など政策は、現実の運用だけでなく、理論も、経験と反省の中で生み出されたものです。学者が、書斎で見つけたものではありません。無味乾燥な理論や制度が、この本を読むことで、より身近に感じることができます。税財政職員はもちろん、広く官僚に、お薦めの本です。

日本の発明

6月18日に、発明協会が、「戦後日本のイノベーション100選」を発表しました。各紙が報道していたので、ご覧になった方も多いでしょう(このホームページでの紹介が遅くなって、申し訳ありません。他にも、たくさん載せる素材がたまっているのです)。
技術的な発明だけでなく、ビジネスモデルなど社会に影響を与えたソフト的なものも並んでいます。例えばトヨタ生産方式や公文式教育法、ヤマハ音楽教室などです。回転寿司も、あります。なるほどね。
私は、世界の生活文化に影響を与えた点で、インスタントラーメン、カラオケ、テレビゲーム(または漫画・アニメ)が3大発明だと思っていました(2005年4月4日の記事)。ここに並んだものを見ると、再考しなければなりません。インスタントラーメン、ウオッシュレット、カラオケを、世界の生活文化に貢献した新御三家として提案しましょう。庶民の生活を変えたという観点からです。

親が子どもを育てられない場合

今日、6月17日の読売新聞1面は、「子供置き去り483人、餓死寸前も。過去3年」でした。読売新聞の独自の調査です。実際には、もっと多いのでしょう。親に放置され、餓死したり、衰弱死した幼児のニュースが、後を絶ちません。その子の立場になったら・・。かわいそうでなりません。
親にはそれぞれの理由があるのでしょうが、許せないことです。しかし、彼らを叱ったところで、事態は好転しません。それだけの能力と意欲のない親を教育するか、社会が子どもを引き受ける必要があります。
どうしても育てられない親には、「役場に相談すれば、助言をもらえたり、子どもを引き取ってもらえますよ」ということを教えるのです。今も、一人で悩んでいるお母さんやお父さんがたくさんいるのでしょう。それは、老親の介護も同様です。でも、学校では、困ったときに役所が助けることを、教えていません。それは、事故を起こしたときや病気になったときも同じです。「家庭で学ぶこと」なのです。
かつては、家族で面倒を見切れない場合は、親族や隣近所が手伝いました。その機能が低下しました。もちろん、昔も両親に捨てられた子どももたくさんいたのです。役所が救えず、救わず、悲しい結果になった場合も多かったのです。

教育には、2つのものがあるのでしょう。一つは、よい子を育てる教育です。もう一つは、障害を持っている人が生きていく際の知恵や、事件事故を起こした場合の対応を教える教育です。これまでは、よい子を育てる教育に力を入れてきました。しかし、そこから漏れ落ちる子どももいます。家族だけでは、守ることはできません。社会で育てる必要があります。
落ちこぼれることや事故に遭うこと、病気になることは、誰にでもあるリスクです。よい子を育てることは必要ですが、それから漏れ落ちても安心して暮らしていくことができるように、社会を複線型に変える必要があるのです。拙著『新地方自治入門」』では、『あなた自身の社会―スウェーデンの中学教科書』(邦訳1997年)を紹介しました(p175)。これは、勉強になり、考えさせられます。明治以来の日本は、よい子を育てる教育では、大成功をしました。しかし、落ちこぼれた場合の教育は、不十分なようです。

職員慰労会

今日の放課後は、復興庁の国会班の慰労会(兼・岡本統括官を突き上げる会)に呼ばれました。6月22日で国会が閉会したので、打ち上げです。異動が決まった職員もいて、送別会もかねています。
国会班は、本庁と国会内の分室に別れて仕事をしています。国会議員に呼ばれて質問を取りに行ったり、資料を提出したり。出てきた質問を、各省と調整したり、復興庁内の各班に割り振ったりと、特殊技能が要求されます(私は、2年半、通常国会を3回経験した数少ない総務(国会担当)課長です)。
150日間の会期中、毎晩のように徹夜をして、国会答弁の準備をしてくれた職員たちです。本当に、頭が下がります。職員から、私が知らなかった「混乱」や「困ったこと」「苦労」を教えてもらいました。そして、「統括官のホームページに、今日の飲み会は書いてもらえますよね」「私たちのことを、誉めてください」と、率直な要求がありました(笑い)。
ご苦労をかけました、紺野君、岡田君、佐貝君。苦労をかけています、小座間君、坂本君、橋本君。これで全員ではないのですが、要求のあった職員だけ名前を出します。名前を出さなかった職員も、ありがとう。
ところで、今国会では、ついに「岡本統括官作成答弁」がありませんでした。これまで復興庁では、誰も担当参事官がいないような問が出たり、たくさんの参事官にまたがって主たる作成者がいない問が、しばしば出ました。私は答弁案を書くのが好きなのと、早くできないと最終確認する私が寝る時間が遅くなるので、ついつい答弁案を書いてしまいます。私が書かなくてすむようになったのは、組織と仕事が固まってきたことと、自ら書いてくれる参事官が増えたということです。少し残念ですが、これもうれしいことです。

公営住宅への転居の課題

6月24日の岩手日報「仮設から公営住宅、新たな課題 釜石で対応を議論」から。
・・被災地で仮設住宅から災害公営住宅への転居が今後本格化することを踏まえ、県は23日、釜石市平田の岩手大三陸復興推進機構釜石サテライトで、移行期の課題を考え共有する研修を初めて行った。阪神大震災で住民の支援活動に携わった福祉関係者を招き、地域コミュニティーで起こり得る問題について理解を深めた。
社会福祉協議会やNPO法人職員、地域住民ら約60人が参加。兵庫県明石市望海在宅介護支援センターの永坂美晴センター長が講師を務め、住民が減る仮設住宅や移転した公営住宅で予想される孤立化などの問題について、阪神大震災の事例を紹介した・・