石弘光著『国家と財政―ある経済学者の回想』(2014年、東洋経済新報社)が、勉強になります。石先生は、元・一橋大学の財政学の教授です。政府の税制調査会長などを務められました。学者として政策の現場でも活躍されました。
この本は、先生の学者としての半生を振り返りつつ、税財政の理論と実際がどのように変化してきたかを、テーマを建てて解説しておられます。日本の戦後から現在までの、税財政史でもあります。租税政策や財政政策は、早い時期から、学者が実務(政策の現場)に貢献した分野です。私たちは、教科書や専門書で税財政を勉強しますが、なぜこのような理論ができて、現実に運用されているか、その背景を学ぶと、より理解できます。
税財政など政策は、現実の運用だけでなく、理論も、経験と反省の中で生み出されたものです。学者が、書斎で見つけたものではありません。無味乾燥な理論や制度が、この本を読むことで、より身近に感じることができます。税財政職員はもちろん、広く官僚に、お薦めの本です。