かつて日本人にとって、土地は最大の財産でした。武士が争ったのは、土地を巡ってです。百姓も、わずかな田畑を争いました。一生懸命も、語源は「一所懸命」で、土地の所有に命をかけたのです。土地をたくさん持っているのが、庄屋であり名家でした。
戦後改革において、農地解放が大きな影響をもたらしました。その後も、「土地本位制」といわれるくらい、日本人の土地信仰が続いています。バブルも、土地への投機が原因の一つでした。東京の地価は、今なお高いです。
他方で、所有者の不明な土地が増えています。大震災からの復興の際に、山林を切り開いて宅地を作るために、用地を買収する必要があります。ところが、場合によっては、土地の登記名義が明治時代のご先祖様のままになっていて、その子孫を追いかけるのが大変なのです。
かつては、跡取り息子が一人で相続したのですが、子どもが平等に相続することになりました。しかし、山林の価値が低下したことと、他方で手入れにカネがかかるので、うやむやになってしまいます。そのうちに、本家の孫は東京に出てしまい、山林どころか家までも放置される、といった事例もあるようです。耕作放棄地もそうでしょう。条件の悪い山林や農地は、財産でなくお荷物になったのです。
東京財団が、『国土の不明化・死蔵化の危機』(2014年3月)という報告書を公表しています。