毎日新聞5月2日論点「あるべき野党の姿は」、宇野重規先生の「世界と日本、見取り図示せ」から。
・・政党政治の祖国といえば英国だが、一朝一夕に仕組みができたわけではない。後に自由党と呼ばれるようになるホイッグ党が、名誉革命をへてウォルポール首相の下で内閣を形成するまでに、30年は経過している。単に与野党があるばかりでなく、政権交代を含めて責任ある政治の仕組みが定着するには、それほど時間を要する。
哲学者のヒュームが面白いことを言っている。重要なのはむしろトーリー党(後の保守党)であった、というのである。野党に転落した後、彼らは単に権力を奪回するだけでなく、野党として権力を批判することが英国の自由にとって重要であることを学んだ。各政党が、権力と自由の両方の視点をもつことが肝心だというのが、ヒュームの教訓である。
自民党が野党期間に何を学んだか、あるいは政権を失った民主党がいま何をしているのかは、ここでは論じない。肝心なのは、政権交代以前の与野党関係にはもう戻れないということだ・・