3月26日の参議院復興特別委員会で、平野達男議員(前復興大臣)が、震災の検証について検証し、質問をしておられます。詳しくは議事録(平野議員の質問は最後です)を読んでもらうとして、要点は次のようなものです。
・東日本大震災について、地震と津波災害については、中央防災会議の中に検証委員会を作って、検証した。何が起きたのか、なぜ予想できなかったか、被災地ではどのようなことが起きたかを、検証した。
・他方、原発事故については、政府事故調、国会事故調、民間事故調、東電による調査会の4つが検証をしたが、原発の爆発とメルトダウンを主な対象としている。住民の避難については、実態調査も国の対応の検証も行われていない。
これに対して、内閣府副大臣が、現在、原発事故に伴う避難実態のアンケート調査をしている旨を答えています。
発災当時、私は地震津波避難者の支援に当たっていました。原発から30キロ圏内は立入禁止になったので、状態はわかりませんでした。そこから逃げてこられた避難者は、私たち被災者生活支援本部でお世話することにしました。避難してこられた方が、津波被災者なのか原発避難者なのかわからないからです。また、逃げてこられた方に、「あなたは、原発事故ですから別です」とは言えません。
原発事故がどうなっているかも、新聞報道でしか知りませんでした。原発事故対応は官邸で、総理、官房長官、官房副長官(参議院)によって行われ、私の被災者生活支援本部は道を隔てた内閣府の建物で、防災大臣、官房副長官(衆議院)、平野内閣府副大臣らで対応していました(当時の分担図)。
少し落ち着いたとき、私が官邸で原発事故対応に当たったら、何をしなければならなかったかを、考えてみました。危機管理の思考訓練です。もちろん、現場におらず、専門知識も無い、情報も持っていないので、一官僚としての思考訓練でしかありません。
まず、課題は何か。津波と違い、事故が続いています。すると、事故を終わらせること、すなわち原発を冷温停止させること、爆発をさせないことです。もう一つは、周辺の危険な区域から、住民を避難させることです。工場の爆発事故を想定してください。工場長と消防や警察がしなければならないことは、消火と次の爆発の防止、そして周辺住民の避難です。工場内で事故の収束させることと、工場外での安全の確保です。これは、今回の原発事故にも当てはまります。
すると、私なら、次のようなことをしたでしょう。まず、全体の責任者に、次のように進言します。「原発内の事故収束責任者と、原発外の安全確保責任者を、それぞれ1人ずつ決めて、権限と責任を持たせてください」と。そして、危機管理センターの壁には、2つの地図を貼ります。一つは、原発敷地内の簡単な配置図で、それぞれの炉がどのような状態にあるかなどがわかる図面です。もう一つは、東北地方の地図で、住民をどのように避難誘導するか、どこが安全かの地図です。この2つは、それぞれに重要ですが、必要な知識も違えば、対象とする範囲も違うのです。
もちろん、この2つのチームの下には、それぞれに課題に応じて対策チームがいくつも作られるでしょう。系統樹のようになります。課題ごとや地域ごとの縦割りの専門班と、それらをつなぐ横串班、全体を仕切る参謀班も構成されます。事故や災害の種類によって、対応すべきこと、専門家も異なります。しかし、しなければならない「動作の基本」は同じです。
大きな事故や災害は起きて欲しくありませんが、起きた場合の思考訓練をしておくことは意味があると思っています。