3月19日に紹介した朝日新聞の記事「被災地の中小企業」に、次のようなくだりがあります。
・・そもそも被災した工場や設備などの再建に公費を投入することは、大災害の復興において長くタブー視されてきた。「税金による企業救済」と批判されかねないからだ。
1995年の阪神大震災の時も、被災した地元の中小企業から補助金の要望が出たが、この原則をタテに国は拒んだ。神戸の靴産業にとっては、復活への足かせになった・・
そうなのです。今回、中小企業庁が決断して、中小企業がグループで復旧する場合に国庫補助金を出し、また仮設店舗や工場を無償で貸し出しました。そのような支援をしないと、この被災地では産業が復旧せず、また商業サービス(小売店)もないのです。
これは、大きな社会変化の中でみると、自己責任から公助への変化に位置づけることができます。
また、ボランティア(NPO)による支援の拡大は、自己責任と親類や近所の助けあい(従来型の共助)から、ボランティアによる支援(新しい型の共助)への変化に位置づけることができます。
政府の責任が拡大し、社会の共助(ボランティア精神、企業の社会的責任)が認識され、コミュニティの重要性が再確認されたのです。そしてこれは、関係者が努力した結果であり、また努力中のものです。
月別アーカイブ: 2014年3月
生活復興に必要なもの
ひょうご震災記念21世紀研究機構がつくった「生活復興のための15章」が、復興庁のHPで見ることができるようになりました(3月19日の記事の続き)。
p3に、目次があります。テーマとしては、暮らし、生きがい、健康、住まい、仕事、まち等です。そして手法として、学びと協働があります。人の生活を包括的にとらえることは、これまでの国の行政にはなく、またこれらのテーマも従来型の行政では、ぴったりとはまらないものです。国は何ができるか。そこに、難しさがあります。
応援職員の事前の研修と途中の相談、2
昨日の「事前の研修と途中の相談」を、派遣される人の立場で、考えてみましょう(以下の記述は、「ワークフォー東北」の関係者との議論を参考にしています)。
まず、応募する際、あるいは派遣される前の段階です。「私は、現地で何をするのか」「何を求められているのか」「その職場は、どのようなところなのか」「何年働くのか」など。職務内容や職場の状況を、明確に知りたいでしょう。「現地に行ってみてから考えよう」では、不安です。
また、「被災地がどのような状況にあるのか」も重要です。現地の状況は、新聞報道だけではわかりません。
派遣が決まったら、「事前研修」が必要です。公務員としての心得です。守らなければならない倫理や守秘義務など、民間企業と共通する面とともに、公務員特有の縛りがあります。情報公開やサイバー攻撃も。このような法令の知識だけでなく、次のような「派遣者の心得」とも言うべきものがあります。
企業と役所では、目標と手続きが違います。企業の場合は儲けるためにに、少しでも早く企画を立て実行します。それが、ほめられます。しかし、役所の場合は、公平性が必要です。「同じ条件なのに、A地区だけ優遇して、B地区はそれを認めない」といったことは、認められません。理屈が立てば、認められますが。「内緒ですが、あなただけ優遇します」は、ダメなのです。
そして、決定手続きや支出手続きも、かなり厳格に決められています。ものによっては、議会によるチェックもあります。年に4回の議会もあります。これは、企業で言えば株主総会でしょう。このような違いは、企業経験のある方が、異口同音に指摘されます。
社風の違いとともに、地域の風土も違います。僻地の小さな村では、東京の大手町とは違った「時間や慣習」で物事が進みます。もちろん役所も、企業を見習って改善すべき点はたくさんあります。しかし、いくら良い考えでも、役場の中や地域の中で一人で奮闘しては、改革は難しいです。耕運機や軽トラックが走っている農道を、スポーツカーでぶっ飛ばすと、交通事故が起こります。あるいは、一人だけゴールにたどり着いて満足したけど、後ろを見たらみんなを置き去りにしていたとか(ちょっときつい比喩ですが)。
改革するためには、周りを巻き込む必要があります。そのために、ひとまず、現地の風習に慣れてもらう必要があります(私は、外部の方の刺激によって、役場の改革が進むことを期待しています。しかしそのためには、十分な手順が必要なのです)。
こんな時に効果的なのが、先輩の経験談です。私も、公務員になったときや、管理職になったときに、いくつか研修を受けましたが、一番役に立ったのは、先輩の経験談や懇親会や仕事場での質問でした。紙に書いてあることも重要ですが、書いてないこと・書けないことで、それ以上に役に立つことがあります。
次に派遣中は、受入れ団体や送り出し団体(上司や人事当局)による、定期的な面談や相談が必要です。普通の職場で行われている、上司との面談、人事当局による面談、先輩による指導や相談、メンタルな相談です。また、似たような境遇の人たちや経験者による相談も、効果的です。「私も、その点に悩んだのよ」と。
そして、派遣期間が終わった後、この経験をどのように活かすか。また、企業から派遣されたのではなく、個人で応募された方は、次の職探しがあります。
職員の方に、安心して働いてもらい、能力を発揮してもらうためには、それなりの配慮が必要です。
復興増税
先日、所得税の確定申告をしました。最近は原稿も書いていないのですが、寄付金控除などがあるので、申告しました。申告するといっても、多くの事項は源泉徴収票を転記します。ところが、途中で税額を計算したら、何度やっても合いません。課税金額に税率をかけるのですが、その金額よりも源泉徴収されている金額の方が多いのです。「おかしいなあ」と思いつつ、最後まで書き上げたら、わかりました。
平成25年の所得から、所得税の他に、復興特別所得税(所得税額×2.1%)が上乗せされるのです。源泉徴収されているのは、所得税だけでなく、復興特別所得税もあったのです。まさにその増税分を、仕事で使わせてもらっているのです。
応援職員の事前の研修と途中の相談
先週のことになりますが、「ワークフォー東北」の、派遣事前研修に、挨拶兼激励に行ってきました。この春から、被災地に行ってくださる9人の方の研修です。被災地に入る前に、一通りのことを知ってもらう必要があります。また、民間人から公務員になっていただくので、公務員としての基礎知識も必要です。
被災地では人が足りないので、たくさんの方に応援に入ってもらっています。しかし、だんだんと「欠けていたこと」「今後配慮すべきこと」がわかってきました。当初は、なんと言っても人が足らないので、なるべくたくさんの人を送ることが重要でした。これは公務員の応援も、ボランティアも同じです。しかし、それだけではうまくいかないことがわかってきました。
まず、地元が必要としている人材を送ることです。誰でも良いというわけではなく、必要とされる技能を持った人を送る必要があります。「ワークフォー東北」は、そのために「お見合い機能」を充実させています。すると、お見合いが成立しない場合もあります。当然です。でも、それをせずに送り込んだら、本人にも地元にも、不幸な結果になります。
もう一つが、この事前研修です。そして、派遣された後の「ケア」です。これまで、十分には行えていませんでした。これは、ワークフォー東北を使った民間人派遣だけでなく、総務省枠組みによる派遣、復興庁の枠組みによる派遣も同じです。通常に企業や役所に採用された職員でも、研修を受け、上司による相談などを行っています。被災地に応援に入ってもらっている方には、それ以上に難しい境遇で働いてもらっています。もちろん志の高い方ばかりですが、それに甘えているわけにはいきません。