昨日の「事前の研修と途中の相談」を、派遣される人の立場で、考えてみましょう(以下の記述は、「ワークフォー東北」の関係者との議論を参考にしています)。
まず、応募する際、あるいは派遣される前の段階です。「私は、現地で何をするのか」「何を求められているのか」「その職場は、どのようなところなのか」「何年働くのか」など。職務内容や職場の状況を、明確に知りたいでしょう。「現地に行ってみてから考えよう」では、不安です。
また、「被災地がどのような状況にあるのか」も重要です。現地の状況は、新聞報道だけではわかりません。
派遣が決まったら、「事前研修」が必要です。公務員としての心得です。守らなければならない倫理や守秘義務など、民間企業と共通する面とともに、公務員特有の縛りがあります。情報公開やサイバー攻撃も。このような法令の知識だけでなく、次のような「派遣者の心得」とも言うべきものがあります。
企業と役所では、目標と手続きが違います。企業の場合は儲けるためにに、少しでも早く企画を立て実行します。それが、ほめられます。しかし、役所の場合は、公平性が必要です。「同じ条件なのに、A地区だけ優遇して、B地区はそれを認めない」といったことは、認められません。理屈が立てば、認められますが。「内緒ですが、あなただけ優遇します」は、ダメなのです。
そして、決定手続きや支出手続きも、かなり厳格に決められています。ものによっては、議会によるチェックもあります。年に4回の議会もあります。これは、企業で言えば株主総会でしょう。このような違いは、企業経験のある方が、異口同音に指摘されます。
社風の違いとともに、地域の風土も違います。僻地の小さな村では、東京の大手町とは違った「時間や慣習」で物事が進みます。もちろん役所も、企業を見習って改善すべき点はたくさんあります。しかし、いくら良い考えでも、役場の中や地域の中で一人で奮闘しては、改革は難しいです。耕運機や軽トラックが走っている農道を、スポーツカーでぶっ飛ばすと、交通事故が起こります。あるいは、一人だけゴールにたどり着いて満足したけど、後ろを見たらみんなを置き去りにしていたとか(ちょっときつい比喩ですが)。
改革するためには、周りを巻き込む必要があります。そのために、ひとまず、現地の風習に慣れてもらう必要があります(私は、外部の方の刺激によって、役場の改革が進むことを期待しています。しかしそのためには、十分な手順が必要なのです)。
こんな時に効果的なのが、先輩の経験談です。私も、公務員になったときや、管理職になったときに、いくつか研修を受けましたが、一番役に立ったのは、先輩の経験談や懇親会や仕事場での質問でした。紙に書いてあることも重要ですが、書いてないこと・書けないことで、それ以上に役に立つことがあります。
次に派遣中は、受入れ団体や送り出し団体(上司や人事当局)による、定期的な面談や相談が必要です。普通の職場で行われている、上司との面談、人事当局による面談、先輩による指導や相談、メンタルな相談です。また、似たような境遇の人たちや経験者による相談も、効果的です。「私も、その点に悩んだのよ」と。
そして、派遣期間が終わった後、この経験をどのように活かすか。また、企業から派遣されたのではなく、個人で応募された方は、次の職探しがあります。
職員の方に、安心して働いてもらい、能力を発揮してもらうためには、それなりの配慮が必要です。