日経新聞経済教室2月18日、宮川努・学習院大学教授の「賃上げ問題の論点。環境整備こそ政府の役割」から。
・・日本全体の生産性格差が広がる中で、賃金格差拡大を避けつつ、多くの人が賃金の上昇を享受する方法は2つある。
1つは、個人所得税の累進度を高め、高所得者から低所得者への分配度を強めることである。しかしこの方法は、高所得者の意欲を損ね、賃金上昇の源泉である生産性上昇そのものを抑制する危険性がある。
したがって望ましいのは、2つめの方法である。すなわち、ある程度の累進税率を維持しつつ、流動的な労働市場を活用し、より生産性が高い、賃金の高い職種・業種へ労働者が移動しやすい環境を作っていくことである・・
・・労働者への配分決定は、労働組合との協議を踏まえた経営者の重要な決定事項である。国際的に高い法人税を払い、規制によって経営戦略の制約を受けながら、さらに賃金の決定まで政府からの要請に追随する姿を見ると、経営者の役割が改めて問われているように思う。今回の賃上げ決定が、政府からの指示待ち企業を多く生み出すとすれば、それは成長戦略が目指す方向とも矛盾する・・