読売新聞2月2日の「地球を読む」白石隆・政策研究大学院大学長の「平和と安定へ新システム」から。
・・21世紀に入り、世界の政治経済システムは、大きく変わりつつある。これには2つの側面がある。1つは、新興国の台頭である。世界の国内総生産(GDP)は、2000年の33兆ドルから2010年の64兆ドルへとほぼ倍増し、IMF(国際通貨基金)によれば、2018年には97兆ドルに達する。主として新興国の高成長のためである。
その結果、1990~2000年には世界経済に占めるG7(先進7カ国=日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)のシェアは65~66%だったのが、2010年に50.5%、2018年には44.7%に低下する一方、新興国のシェアは1990年~2000年の20%から2010年に34.3%、2018年には41.5%に伸張すると予想される。
かつてG7だけで世界経済の3分の2を占めた時代は、G7で事実上、世界経済運営に関わる重要課題に対処することができた。だが21世紀に入り、新興国の台頭とともに、G7の力は相対的に低下した。2008年の世界金融危機を契機にG20(主要20か国・地域)が作られた理由は、そこにある・・
毎年の変化は少しずつでも、10年20年とそれが積み重なると、構図が大きく変わります。それがある分岐点を超えると、これまでの全体バランスが崩れ、新しい状態に変化します。「量の変化が質の変化を生む」と、いっても良いでしょう。そして、いま世界は、そのような大きな「地殻変動」の中にあるようです。かつては、西欧近代では、パックス・ブリタニカから、パックス・アメリカーナへ。東アジアにあっては、中華世界から、その解体へと。
挑戦者側の国は、自らの膨張が支配国への挑戦であるだけでなく、それが世界システムの改革を伴うことを意識してません。そこに、移行期の混乱が生じます