松本佐保著『バチカン近現代史―ローマ教皇たちの近代との格闘』(2013年、中公新書)を、紹介します。
書評欄で、「バチカンが近代・世俗化・主権国家との戦いの中で、どのように生き残ったかを分析した書」という趣旨の解説があったので、「なるほど、そうか」と思って読みました。
世界史の授業では、中世のキリスト教(カトリック教会)の強さを習います。しかし、近代になって、イタリアが国家として成立していく過程で、そして各国で国教から外される過程で、どのように法王庁は生き残ったか、生き残りを試みたかは、習いません。
詳しくは本を読んでいただくとして、妥協や改革を拒否し孤立した教皇や、ときの政治に近寄りすぎる教皇も出てきます。共産圏崩壊に果たした役割も、解説で初めてわかりました。なかなか生々しいです。そして、新大陸での信者獲得が、そんなに新しいことではないことにも、驚きました。
いまなおバチカンは、大きなソフトパワーを持っています。チャーチルがカトリック教会のパワーを指摘した際に、ソ連の独裁者スターリンが、「教皇が何個師団持っているのだ?」と答えた逸話は、有名です。さて、軍隊に換算したら、いくらぐらいの兵力になるのでしょうか。
時と場合によっては、軍隊以上の力を持っていると思います。イスラム圏での、自爆テロを聞くたびに、自らの命をおしげなく捧げる宗教の強さと怖さがわかります。