復興支援に協力してくださっている、企業とNPOの方の鼎談を紹介します。「なぜ今、企業がNPOのリーダーシップに注目するのか?グローバル・ビジネスリーダーとNPOリーダーの対話から」。
人材派遣を斡旋してくれているNPOのETIC.の宮城治男さん、それに協力してくれているジョンソン・エンド・ジョンソン社長の日色保さん、日本財団の青柳光昌さんです。
日色さん:・・社会貢献活動においても、「寄付をしたから、企業としての責任は果たしました」ということはあり得ません。私たちが直接手を動かすことによる効果は限定的です。一方で、パートナーである支援先のNPOがどんな団体で、どんなビジョンをもって活動しているのか、そして私たちがお手伝いしたことが、成果を生み出す上でどう活かされているのかということには、支援する以上は 責任を持とうと思っています・・
・・私たちも、大震災の直後には短期的な物資や資金の支援をしました。ですが、震災から2年半が経過した今では、より息の長い支援をしていきたいと思うようになりました。水が足りない所に水を配ることも重要ですが、やはり井戸を掘る方法を伝えたほうがより効果的かつ持続性があると思います。右腕派遣プログラムは、復興の担い手を送ることで地域のニーズを持続的に満たし、地域経済の循環を創出します。この点が、私たちが大事にしたいこととマッチしていました・・
青柳さん:・・日本財団はもともと本業としてNPO支援に力をいれてきました。そういった流れもあり、今回の震災でも様々な支援を進めてきました。その中でひとつ重要なことは、支援そのものに加えて、こういった活動の担い手をいかに育てていくかということです・・
藤沢烈さんに、教えてもらいました。
災害時の金銭と物品の提供といった支援に続き、被災直後の肉体労働的なお手伝い(ボランティア)が、大きく進みました。社会に理解され、たくさんの人が参加してくれます。課題は、その次です。
被災地の暮らしが元に戻るために、継続的な支援、ものや労働の提供でない知恵と人の参加です。これは、まだ試行錯誤中です。地元で何が求められているか、誰が何を提供できるかを探しながらです。他方で、継続的・組織的に支援できる仕組み、それに参加したいという企業や人の発掘とつなぎが必要です。
復興庁でも、人材斡旋に新しい仕組みを導入しようと、「Work For 東北」という試みを始めました(「民間人の被災地派遣応援の仕組み」10月4日の記事)。
繰り返しになりますが、企業の力、NPOの力を、どのように引き出すか。復興庁では、被災地で社会を変える実験をしています。そう思うと、仕事が楽しくなります。
月別アーカイブ: 2013年11月
予定、あるいは嘘つきの秘書?
毎日夕方に、秘書が、翌日の日程表を持たせてくれます。なんと、昨日は「明日は、予定が一件も入っていません」とのこと。でも、私は、彼女に「嘘つき」と言い放って、帰りました。
今朝、8:30に出勤したら、直ちに来客があり、続いて電話がかかってきたり、部下からの報告が入ったり・・。結局、午前中は、自分の時間がとれませんでした。そこで、もう一度、秘書さんに「嘘つき」と(笑い)。
放課後は、異業種交流会に出席(夜の予定は、毎日の予定表には載せません。恥ずかしいので)。私の知らない分野の話は、勉強になります。しかも、その分野の第一人者ばかりです。「へ~、世の中こんなことになっているのだ」と。ぜいたくな時間です。他方、私が知っていて、向こうさんが知らない話もあって・・。
東京オリンピックの持つ意味、もたせる意味、3
あえて切り口を際出たせれば、次のようになります。
競技施設といったハードだけでなく、ソフト。一回きりのイベントでなく継続的なもの。スポーツ競技という肉体だけでなく、知的なもの。競技だけでなく、日本社会。
尾田栄章・元建設省河川局長は、オリンピックを機会に世界の英知を集め、世界の主要な関心事について、解決策を探る国際会議を始められないか。「英知の五輪」を提唱しておられます(読売新聞2013年10月10日、論点)。
スポーツ競技の大会であるオリンピックに、あまりたくさんのことを期待してもいけませんね。なお、オリンピックには、「文化プログラム」もあります。ロンドンの例。
前回の東京オリンピックは、戦後復興を成し遂げ、世界の一流国へ仲間入りした成人式でした。でも、東京オリンピックが、それら経済的社会的意義を成し遂げたのではありません。しかし、そのシンボルになったのです。日本人の多くがそう考え、世界の人がそう見たのです。
次回2020年の東京オリンピックを機会に、日本社会の目指すべき姿と、世界の中の日本を考えてみたいのです。
50年前の先輩やご先祖様に「半世紀経って、日本はこうなりましたよ」と報告する。そして50年後の後輩や子孫に「私たちは、こんな日本を残したんだよ」と言えるように。
東京オリンピックの持つ意味、もたせる意味、2
2020年の東京オリンピックで、誰に、何を見てもらうか。
外国から、たくさんの観光客やメディアが、訪れます。彼らに見てもらうところ、彼らに見せたいところ。そしてそれを機会に、私たち日本人が再認識する「日本の良いところと、伸ばすべきところ」です。
そうしてみると、前回が成人式でしたが、次回は半世紀経ってさらに発展し、成熟した日本社会でしょう。
高度経済成長が終わってから半世紀経っても、そしてオイルショックやリーマンショックを経ても、世界のトップグループを進む経済力。その豊かさと活力が、まずあります。
それだけでなく、清潔、きれい、安全、親切、落ち着きといった社会の姿。これは、なかなか他の国は、まねできません。日本食や日本の生活様式。クールジャパンで売り出している、アニメや若者文化。
世界一の高齢国であって、豊かさと安定を続ける姿。これら日本の良い点を、どのように見てもらいましょうか。
施設やモノでないだけに、見せ方は難しいですね。旅館やレストランでのおもてなしは、見せることができます。
すると他方で、これら正の面の影にある、負の面の克服が必要になります。
広がる家庭間の経済格差、3分の1を超える非正規雇用、引きこもりなど社会の絆から離れた若者など。
これら負の面を克服して、平等で豊かな成熟社会を目指すきっかけにしたいです。
東京オリンピックの持つ意味、もたせる意味
2020年の東京オリンピックについて、考えました。スポーツ競技としてではなく、この世界的イベントが持つ社会的な意味についてです。
近年のオリンピック開催の意義は、大きく2つに分けられると思います。
1つは、経済成長に成功し、先進国の仲間入りをする「成人式」です。1964年の東京(日本)、1988年のソウル(韓国)、2008年の北京(中国)です。
オリンピックは都市が開催する建前ですが、今上げた大会は国家が威信をかけて行いました。国民と諸外国に向けてです。国家が、オリンピックをそのような場として利用するのです。
1936年のベルリン、1980年のモスクワ、2016年のリオデジャネイロも、これに分類できるでしょう。
もう一つは、それ以外の大会です。第1のグループとの対比では、その国にとって2回目の開催であることや、首都でない場合が、典型的になります。もちろん、実際には、そんなきれいに分類されませんが。
なぜ、このような分類をするかと言えば、2回目の東京オリンピックをどのように位置づけるかを考える「補助線」としてです。
第1回目の東京オリンピックは、今述べたように、位置づけが簡単明瞭でした。では、第2回目はどう位置づけるか。
これが、東京以外の都市だったら、位置づけはより簡単でした。「日本には、東京以外にもオリンピックを開催できる都市があります。世界の皆さん、見てください」とです。第1回目から半世紀後の東京で、何を見せるか。何を見てもらうか。
「単なるスポーツの祭典だ」と割り切ってしまえば、それまでですが。せっかくの機会ですから、それなりの意味をもたせたいですよね。立派な競技施設や華やかな開会式を、自慢するのではないと思います。施設やイベントでなく、世界に見せ、後世に残すものです。