与党(自民党と公明党)が、11月11日に、復興に関する第3次提言「原子力事故災害からの復興加速化に向けて」を、総理に提出しました。各紙が大きく伝えていたので、ご覧になった方も多いと思います(例えば朝日新聞11月12日朝刊トップ)。
総理は、直ちに翌12日の閣僚懇談会において、「政府として、与党提言をしっかり受け止め、着実に対策を進めること。担当する関係閣僚は、直ちに検討に着手すること。被災者及び被災地にとって、将来の展望が描けるよう、復興大臣を中心に復興の更なる加速化を進めること」の3点の指示を出されました。
今回の提言は、福島の原発事故災害からの復興に絞ったものです。津波被災地では、どこに住宅が建つか見通しを立てました。建設にはまだ時間がかかりますが、先が見えてきました。
しかし、原発被災地では放射線量の高いところもあり、除染では低減効果が少ないこともわかりました。そのような地域では、まだ帰還のめどが立たないのです。市町村と一緒に行っているアンケート結果では、新しい生活を選びたい(戻らない)という人も、増えています。
そこで提言では、「早期に帰ることができる地域では、除染やインフラ復旧を急ぐこと。他方で、帰還のめどが立たない地域の方で、新しい生活を選びたいという方のために、どのような支援ができるかその内容を示して、判断いただくべきだ」と述べています。
この提言について、各紙はおおむね好意的です。例えば、朝日新聞15日の社説では、次のように述べています。
・・「すべてを事故前に戻してほしい」。被災者の思いはいまも変わらない。
だが、事故から2年8カ月。それがかなわない現実もかみしめてきた。新しい土地で生活を始めたいと考える人が出てくるのは当然だ。支援の選択肢を広げることに異論はない。
公平性をどう保つか。気をつけるべきは、住民の間に新たな分断を生まないようにすることだ。「被災者一人ひとりの生活再建」を基本に、「帰る」「帰らない」を問わず、ていねいに対応していくしかない・・
読売新聞11月2日の社説では、次のように述べています。
・・注目されるのは、帰還をせず、別の地域に住み続けようという住民への支援を打ち出した点だ。住宅取得を容易にする賠償方法の検討などを政府に要請している。
福島第一原発の周辺地域は、年間被曝線量に応じて三つの区域に分けられている。最も線量の高い帰還困難区域の除染技術は確立されていない。
帰還困難区域の厳しい現状を考慮し、提言案が、帰還の見通しをできる限り具体的に示すよう政府に求めたのは理解できる。「新しい生活を選択するために必要な判断材料」として、多くの避難住民に役立つだろう・・提言案は、現実的な復興策の重要性を示したと言えよう・・
毎日新聞の社説(11月12日)も、次のように書いています。
・・政府はこれまで福島第1原発の過酷事故で避難している人々の「全員帰還」を基本としてきた。自民、公明両党が政府に提出した「復興加速化案」は、その方針を変え、長期間帰還がむずかしい地域の人の移住を選択肢と位置づけている。
必ずふるさとに帰ろうと思ってきた人々にとっては抵抗がある方針かもしれない。しかし、どっちつかずの生活をこれ以上住民に押しつけるわけにはいかない。むしろ、もっと早く示すべき選択肢だった。
政府は、帰還・移住のどちらの選択をする人に対しても、新たな生活設計に向けた支援に手立てを尽くしてもらいたい・・
福島県知事(例えば福島民報)や、多くの地元市町村長から(例えば福島民友)も、評価するとの発言があります。
ただし、住民の方々の理解を得ること、そして提言に沿った様々な対応を進める必要があります。これからの政府の仕事が重要です。