分権改革の総括、その2

・・要するに、国の側も自治体の側も、急速に、所掌事務拡張路線に属する改革へと舵を切り始めているのである。地方分権改革が混迷し始めた最大の原因はこの点にある。
所掌事務拡張路線に属する改革は、国と自治体の間の意見対立、都道府県と市区町村の間の意見対立が先鋭化せざるを得ない改革である。それだけに、この路線に属する改革を進める際には、殊更に慎重かつ綿密な検討が求められる。にもかかわらず、戦前から繰り返し浮上しては消える特別市構想や都制構想、そして道州制構想は、いつまでたっても素朴な着想の域を出ない。これを実現すれば、あらゆる懸案事項を一挙に解決できるといった万能薬のような制度改革構想など存在しないのである・・
・・現在の第二次安倍内閣には、震災復興の促進、エネルギー政策の再構築、「アベノミックス」の推進、TPP交渉等々、きわめて多くの大きな課題への対応が課せられているので、これらに加えてさらに、地方分権改革に大きなエネルギーを割く余裕があるとは思えないので、地方分権改革については、当面は従前から継続している課題に着実に取り組むこととし、道州制基本法の制定は先送りすべきである・・

なぜ、あの時期に第一次分権改革が成功し、三位一体改革が挫折と言われながらも一定の税源移譲を実現したか。関係者の主張や陳情だけでは物事は動かず、時代の背景、政治の状況、関係者の努力、理論的裏付け、マスコミの支援などが重要であることが改めてわかります。
その点で、同じ会議で、谷隆徳・日経新聞編集委員が、「メディアは地方分権に飽いてきている?」と指摘しておられます。
なお、月刊『地方財務』(2013年11月号)で、小西砂千夫・関西学院大学教授が、「地方分権改革はどのように進んで来たか、どこへ行くべきなのか」と題して、西尾先生の資料を解説しておられます。