北村亘先生の新著

北村亘・大阪大学教授が、『政令指定都市―百万都市から都構想へ』(中公新書)を出版されました。かつて大都市とは、東京と5大市(横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)のことでした。今や20市、人口では日本の総人口の5分の1を占めています。東京23区を合わせると、4分の1です。政令市と聞くと、都市機能集積の大きな大都市を思い浮かべますが、合併によって人口が増えた市も多く、農村部だけでなく山間僻地を抱えた政令市も多いです。主に人口要件で指定したので、ブロックの中心都市だけでなく、お隣にも指定市がある状態になりました。夜間人口が昼間人口より多い市、すなわち周辺の地域から人が集まるのではなく、昼間に外に出かける人が多い市もあります。
また、政令市に権限を増やすと、政令市を抱える府県は、中心部が中抜けになります。大都市を、州や府県並みに位置づけている国もあります。
大都市制度をどうするかは、戦後日本の地方行政の課題の一つでした。しかし、戦後改革の際に、府県並みの特別市制度を導入しようとして失敗し、その後は、大きな改革もなく大都市の数が増えることになりました。

本書は、これまでありそうでなかった研究です。しかも、制度論と歴史だけでなく、機能や市役所内部の分析も書かれています。大学の研究者が、単なる理論書や欧米の輸入学問でなく、日本の現実を分析する書物を書いてくださるのは、ありがたいことです。
新書という形で出版されると、読みやすいですね。もちろん、執筆者にとっては、制約も多くなりますが。
あとがきに、小生の名前も並べてもらいました。十分なお手伝いもしていませんが、学界と実務とをつなぐことに少しでも貢献できたら、うれしいです。