・・生命体も企業も国家も、安定した秩序と、対極的な混沌のはざまで、危ういバランスを取りながら生き延びています。失敗すると、破滅は時間の問題です。
人々は組織「内」のあつれきや混乱を嫌って、あるいは従来の取引慣行に引きずられて、企業内や部門内の「近所づきあい」に依存しがちです。しかし、世界の変化に気づかず、開発に時間がかかりすぎたり、課題に速く対応できなかったりと弊害は多い。
表面的には落ち着いて見える近所づきあいに安住している間に、改革や事業化、製品化が遅れる一方、時代遅れの対応をし続け、組織は一気に破局に向かうのです。
そうした欠陥を正すのが、最新のネットワーク論、リワイヤリング(情報伝達経路の掛け替え)に基づく組織戦略です。社外の、当然世界の企業や人々を相手にした「遠距離交際」によって、遠くから新鮮で多様な情報と資源をリアルタイムで見つけて採り入れる。そして組織のルールを意識的に壊し、適者生存を遂げることで高い生命力を維持していく。世界で成功する企業はそうした戦略を採っています・・
・・21世紀企業の公共的な使命感に手がかりはあるでしょうか。たとえば、ごまかしがきかないとか、精緻なものを得意とする日本の国民性は今後も強みです。
国民が培ってきた社会資源(ソーシャルキャピタル)の豊かさも大切です。3・11後の市民行動が示すように、多くの人が見せた自発的な秩序の回復と維持への取り組み、支え合いは、使命感を考える大きな土俵になります。
私が使命感を強調するのは現在滞在する米国で、そうした実例を目の当たりにしているからです。
十数年前は影すらなかったグーグル、フェイスブックなどソーシャルテクノロジー企業が世界を席巻しています。ビジネスのあり方と人々の生活を根源から変え、巨額の産業と雇用をつくりました・・
アベノミクスが、こうした変化を見ないで、旧来型の政策の作文と実施ゴッコで終われば、日本の製造業は閉ざされた世界に安住し、環境変化に対応できず、柔軟なネットワーク戦略も採れず、消え去ってゆくでしょう。企業の「ガラパゴス化」ですね。
いま、政府がやるべきは、新ビジネスの動きや起業、あるいは企業改革を阻害する環境的要因を取り除くことが最低条件。さらに法律や制度を整え、自発的に創造と技術革新に取り組む人や産業を育てるお膳立てをすることです・・