畑村洋太郎ほか著『福島原発事故はなぜ起こったか―政府事故調核心解説』(2013年、講談社)を読みました。
この本は、政府事故調査委員会の「中間報告」(2011年12月)と「最終報告」(2012年7月)を基本に、一般読者にもわかりやすく解説したものです。著者は、調査員会の委員長だった畑村先生ほか、委員会の中心メンバーです。
中間報告と最終報告は、あわせて1,500ページ、8センチの厚さです。私も、読むのは断念しました。
今回の『核心解説』は、読みやすく、わかりやすいです。200ページの薄さです。東電、政府、自治体が、事故に際してどのような行動を取ったのか。事故はなぜ起こり、被害が拡大したのはなぜか。それから何を学ぶかが、わかりやすく解説されています。
私は、発災以来、大震災にかかわってきましたが、原発事故の担当ではなく、また詳しく勉強もしてきませんでした。この本を読んで、いくつか思い違い(水素爆発が放射性物質を飛散させたとか)を訂正することができ、また想像していたことがその通りだったと確認できました。お薦めです。
(主な目次)
第2章 福島第一原発で起こったこと(津波襲来から電源喪失までの経緯、事故は避けられたのか).
第3章 政府と地方自治体の失敗(事前対策の不備、政府の緊急時対応の問題点).
第4章 東京電力の失敗と安全文化
第5章 なぜ被害が拡大したか(避難がもたらすもの、除染は可能か)
第6章 福島事故の教訓をどう生かすか
原発事故を、防災と起きてからの対処の観点から見ると、次のような場面に分けることができるでしょう。
事前にあっては、規制と事故が起きたときの準備が十分だったか。
事故が起きたときは、発電所内で直ちに事故を終わらせること(原子炉を止め、放射能を出さないこと)と、発電所外では住民や国民の安全を確保すること(事故情報の開示と住民の避難誘導)です。
その後は、発電所内では安定化と廃炉、外では除染など事故の処理と復興です(避難者の支援とこの復興が、私の仕事です)。もちろん、検証と責任の所在の解明と、今後への教訓のまとめと対策が必要です。