『フォーリン・アフェアーズ・リポート』(2013年4月号)ジェリー・ミューラー教授の「資本主義の危機と社会保障―どこに均衡を見いだすか」から。
・・アメリカを含む先進資本主義国家における最近の政治論争は、経済格差の拡大、そして格差是正のために政府はどの程度経済に介入すべきなのかという、2つのテーマを軸に展開している・・
この数世紀にわたる資本主義の拡散は、人類社会に大きな進展をもたらし、かつては考えられなかったレベルへと人々の生活を引き上げ、人類のポテンシャルを非常に高いレベルで開花させてきた。だが、資本主義の本質的なダイナミズムは、恩恵をもたらすだけでなく、不安も生み出す。このため、資本主義の進展は常に人々の抵抗を伴ってきた。資本主義社会の政治と制度の歴史は、この不安を和らげるクッションを作り出す歴史だったと言ってもよい・・
資本主義は人的なポテンシャルを開花させる機会を大きく広げた。が誰もが、こうした機会や進歩を十分に生かせたわけではない。歴史的にみても、女性、マイノリティ、貧困層にとって、資本主義が提供する機会の平等から恩恵を引き出すのを阻むフォーマル、インフォーマルな障害が存在した。
だが、時とともに、先進資本主義社会では、こうした障害が次第に少なくなるか、取り除かれ、現状における格差は、機会の不平等よりも、むしろ、機会を生かす能力、人的資本の違いに派生していると考えるべきだ。そして、この能力の格差は、生まれもつ人的ポテンシャルの違い、そして人的ポテンシャルを開花させるのを育む家族やコミュニティの違いに根ざしている・・
資本主義が今後も多くの人々に支持され、好ましいと見なされるには、例えば、次のことが必要になる。社会・経済的なはしごのトップ近いにいる人だけでなく、下や中間あたりにいる人々、そして勝者だけでなく敗者を含めて不安を和らげ、市場の失敗の衝撃を弱め、機会の平等を維持できるよなセーフティーネットを維持し、再活性化する必要がある・・
本文は、次のような内容からなっています。詳しくは、原文をお読みください。英語の原文は、こちら。
格差と不安、市場の誕生と欲望の拡大、家庭と資本主義の相互作用、創造的破壊と福祉国家の誕生、脱工業化社会の衝撃、格差を助長する社会変化、近代金融のインパクト、家庭と人的資本と機会の平等、民族・宗教・人種によるパフォーマンスの違い、なぜ教育が万能薬にはなり得ないか、解決策はあるのか。