古くなって恐縮です(いつものことですが)。3月24日の読売新聞特集「NIPPON蘇れ」から。
パート、派遣、契約社員など非正社員が雇用者に占める割合が、1990年の20%から、2012年には35%に増加したこと。非正社員の年収が、正社員に対して3割にとどまるほか、教育訓練を受ける機会が乏しく、結婚もできないこと。非正社員から正社員に転職した割合は27%にとどまることを指摘しています。
清家篤慶應義塾長の発言から。
・・国際競争の激化や少子高齢化で労働力が不足する中、日本が活力を向上させるには、一にも二にも、付加価値の高い商品やサービスを生み出せる人材を育てることが欠かせない。
だが、現状では課題も多い。若者の間では、新卒での就職に失敗し、身分が不安定で十分な職業能力を身につけにくい非正社員として働く人も増えている・・
経済成長戦略の観点から、正社員雇用規制を緩和して労働市場の流動化を進めようという議論が、最近強まりつつある。産業構造を転換することに加え、安定した正社員と不安定な非正社員、といった二極化している現状の打開策につながるとの期待感もあるのだろう。
確かに、流動化が進めば、既に能力を身につけている人にとっては、より能力を活かせる職場に転職できるプラスの面もある。だが、能力は安定した雇用のもとで蓄積される。若者などまだ能力を身につけていない人には、マイナスになることを忘れてはいけない・・
流動化の議論の底流には、人材は「作る」のではなく、「買えばいい」という考え方があるのかもしれない・・
人材は買えばいいとの風潮が蔓延すれば、企業は自社で育てるのは損と考え、付加価値の高いモノやサービスの生産に貢献できる人材を育てる環境が失われてしまう。人の育成こそが、活力向上のカギを握ることを忘れてはならない・・