柳澤協二著『検証官邸のイラク戦争―元防衛官僚による批判と自省』(2013年、岩波書店)から。著者は、防衛官僚で、2004年から2009年まで、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務め、自衛隊イラク派遣の実務責任者を務めました。この本では、イラク戦争に際し自衛隊を派遣した政策について、政府も国会も検証をしていないことを指摘し、個人でその総括を試みています。
・・防衛官僚としての半生を振り返るとき、与えられた状況の中で最善を尽くしたという意味で、職業人としての良心に恥じるところはない。・・だが、そのことと、私が関わってきた政策に誤りがなかったかどうかを問うこととは、別の問題だ。
イラク戦争は、世界の価値観を揺るがす大きな出来事だった。それをめぐって何度も議論し、考えた。疑問も残っていた。だが、官僚としての仕事はそれを所与の前提として受け入れたうえで、日米同盟を強化し、自衛隊を国際的に活用するための政策を立案、実行することだった。加えて、日々多くの課題を抱えた官僚の立場では、自分の仕事の根本的な意義や価値観を問い直す余裕はなかった。
それゆえ、退職した私がなすべきことは、自分自身が関わった政策(多くの場合それらは、疑いもなく正しいと信じていたわけだが)について、問い直すことだと考えた。それが、官僚としての職業的良心を貫く所以でもある・・