経済同友会の広報誌『経済同友』4月号に、3月10日に仙台で行った講演の概要(P3)が載りました。
地域の復興には、産業と雇用の回復が不可欠です。また、この講演でも強調しましたが、東日本大震災が「行政と民間企業とNPOの連携元年」になってほしいと、期待しています。
経済界の方が、復興に関心を持ち、協力していただけるのは、力強い限りです。ありがとうございます。
月別アーカイブ: 2013年4月
原発事故の検証、政府事故調報告簡略版
畑村洋太郎ほか著『福島原発事故はなぜ起こったか―政府事故調核心解説』(2013年、講談社)を読みました。
この本は、政府事故調査委員会の「中間報告」(2011年12月)と「最終報告」(2012年7月)を基本に、一般読者にもわかりやすく解説したものです。著者は、調査員会の委員長だった畑村先生ほか、委員会の中心メンバーです。
中間報告と最終報告は、あわせて1,500ページ、8センチの厚さです。私も、読むのは断念しました。
今回の『核心解説』は、読みやすく、わかりやすいです。200ページの薄さです。東電、政府、自治体が、事故に際してどのような行動を取ったのか。事故はなぜ起こり、被害が拡大したのはなぜか。それから何を学ぶかが、わかりやすく解説されています。
私は、発災以来、大震災にかかわってきましたが、原発事故の担当ではなく、また詳しく勉強もしてきませんでした。この本を読んで、いくつか思い違い(水素爆発が放射性物質を飛散させたとか)を訂正することができ、また想像していたことがその通りだったと確認できました。お薦めです。
(主な目次)
第2章 福島第一原発で起こったこと(津波襲来から電源喪失までの経緯、事故は避けられたのか).
第3章 政府と地方自治体の失敗(事前対策の不備、政府の緊急時対応の問題点).
第4章 東京電力の失敗と安全文化
第5章 なぜ被害が拡大したか(避難がもたらすもの、除染は可能か)
第6章 福島事故の教訓をどう生かすか
原発事故を、防災と起きてからの対処の観点から見ると、次のような場面に分けることができるでしょう。
事前にあっては、規制と事故が起きたときの準備が十分だったか。
事故が起きたときは、発電所内で直ちに事故を終わらせること(原子炉を止め、放射能を出さないこと)と、発電所外では住民や国民の安全を確保すること(事故情報の開示と住民の避難誘導)です。
その後は、発電所内では安定化と廃炉、外では除染など事故の処理と復興です(避難者の支援とこの復興が、私の仕事です)。もちろん、検証と責任の所在の解明と、今後への教訓のまとめと対策が必要です。
がれき処理の前と後
現地でのがれき処理の「処理前と処理後」が、わかりやすい写真で見ることができます。環境省のHP「写真でわかる処理の進捗」。この写真は集積所での処理の様子です。上から2つめの「宮城県牡鹿郡女川町石浜字高森」の写真はお勧めです。下の印を右に動かすと、がれきが片付けられ、冷凍庫が建つのがわかります。
被災直後に、町の中にあるがれきが、どのように片付けられたか。その前後の写真を撮ってくれた職員がいました。被災者生活支援チームのHP「災害廃棄物の搬出状況」。これも優れものです。ここから運び出されたがれきが、上で説明した集積所に集められたのです。
どんな説明文章より、写真2枚の方がわかりやすいです。
企業の本業を生かした貢献、マイクロソフト社
様々な企業が、復興に貢献してくださっています。先日、日本マイクロソフト社の幹部の方と、お話しする機会がありました。マイクロソフト社は、発災直後から、いろんな支援をしてくださっています。本業を生かしたものとして、次のような支援があります。
・NPOや企業に、無償で製品(ソフトウエア)を提供
・救援活動を行うNPOに、避難者や物資の管理をするソフトを提供
・被災企業に中古パソコンを提供
このような製品の提供の他、技術を教えるという支援もあります。すなわち、NPOと協力して、被災者にITスキルを教え、就労を支援しています。これで、851人が修了し、求職中の人は462人、就労した人は193人だそうです。現地では雇用のミスマッチが課題になっているので、これは効果的な対策です。今や事務職の応募用紙には、ワードとエクセルができることは、必須のようですから(私は「一太郎」ですが)。
「成果と意義」に次のように書かれています。
・・私たち日本マイクロソフトは・・2 つのことを学びました。
1 つは、復興支援においては、地域をよく知る NPO の皆さんをしっかりと支えることが重要だということです。地域の NPO が自治体、事業者、団体と連携した結果、地域コミュニティに活気が生まれ、プロジェクトに広がりが生まれたのです。
もう 1 つ学んだこと、それは見えない成果を見える化することの意義です・・こうした NPO との協働による企業の社会的責任活動が、事業価値と社会目的価値があることを証明できることによって、意義を広く社会に認識していただくことに期待がかかります・・
このように、自治体、NPO、被災企業などと連携して、本業を生かした支援をしてくださっています。ありがとうございます。紹介が遅くなりました。
モノなどの支援やモノへの支援(ハードへの支援)でなく、このようなノウハウの提供や昨日紹介したスポーツ選手による「教室」(ソフトへの支援)は、見えにくいのです。上手にPRしたり、記録する必要があります。