今日「原子力災害による被害者支援施策パッケージ」を公表しました。原発事故災害によって、健康不安や生活上の負担が生じています。それへの支援を行うことや、子どもの元気を取り戻すための施策が必要です。子どもの元気復活、子どもの健康・心のケア、子育て・生活環境の改善など、現在取っている施策と新年度予算に盛り込んだ施策を整理しました(概要)。
昨年夏に、議員立法で「子ども被災者支援法」ができました。この法律は、子どもを中心に被災者の生活支援を行うことを定めています。しかし、いくつも難しい問題があります。
まず、政府が避難を呼びかけていない地域から自主的に避難された方への支援をどう考えるかです。安心の水準は個人によって異なるので、多くの人が安全だと思っても、「私は不安だ」という方もおられます。それはそうでしょう。しかし、その方々を、国民の税金で支援すると、地元に残っている多くの人との公平性が問題になります。
マイケル・サンデル先生のテーマとなるような、難しい問題です。
今日の発表についても、「反対だ」という声もあります。ある方の主張は、次のようなものでした。
「例えば中通り(福島県中央部)から自主避難している人に支援を行うことは、中通りも危険だと言っていることにならないか。今回の支援施策を宣伝すると、中通りにすんでいる子どもが不安になります。
私のように強制的に避難させられ放射線が高くて家に帰ることができない者と、自主避難している人とは違います。」
次に、法律には、支援対象となる地域と放射線基準を定めることも、書かれています。政府は、20msV/年を帰還の基準としています。この基準でも、国際的な標準よりはるかに厳しい基準です。ところが、この法律は、この基準より厳しい数値で線を引けと定めています。国会での議論でその数値が決まらず、行政府で決めよとなっています。お叱りを覚悟で言うと、「多様な意見をまとめる国会で決まらなかった基準を、政府で決めよ」ということです。これはなかなか難しいです。
これは、国会と内閣の役割を考える、政治学や憲法学のテーマになるでしょう。
今回発表した「支援パッケージ」は、その基準を定めることより、支援施策を示すことを優先しました。
対象となる人と地域によって、施策は異なってきます。だから、一つの基準を決めなくても、関係する施策を類型化してお示しできるのです。
例えば、健康調査は全県民を対象とします。今回、避難しておられる方が、ふるさとを訪れる際の高速道路料金を無料にする範囲を広げました。これも、強制的に避難してもらった方と、自主的に避難された方では、対象地域と支援内容が異なります。施策によって、対象が異なるのです。