8月22日のニュースが、「国土交通省の公共交通事故被害者支援室が、心のケアなどに当たる職員の研修を始めたこと」を、伝えていました。これに合わせてNHKでは、斉藤隆行記者が、「鉄道・交通事故、変わる被害者支援」を解説しています。
2012年4月、国土交通省に「公共交通事故被害者支援室」が設置されました。遺族を含めた事故被害者の支援が、目的です。
拙稿「社会のリスクの変化と行政の役割」第4章二2「変わる安心提供の手法」で、事故対策として規制や救助だけでなく、保険と無過失賠償責任制度を作ったこと。介護保険制度など、金銭給付だけでなく生活支援(人的サービス)を作ったこと。さらに、犯罪被害者について、金銭給付制度だけでなく、支援が相談や損害賠償請求についての援助や、加害者からの「お礼参り」の防止などに広がっていることを紹介しました。
加害者を罰することや、被害を金銭補償することだけでは、被害者の「被害」は回復しないのです。古典的な民法の原則だけでは、不十分だと認識されました。
公共交通事故被害者支援室も、この変化の中に位置づけることができます。加害者を罰したり、再発防止策を強化するだけでなく、被害を受けた人とその家族への支援が重要だと、認識されつつあるのです。それは、金銭補償だけでなく心の手当を含みます。災害時の心的外傷後ストレス障害(PTSD)対策の重要性の認識も、同様です。そしてそれは、被害者とその関係者だけでなく、救助に当たった警察や消防、自衛隊、さらには役場職員にも及びます。