読売新聞8月19日「地球を読む」は、フランシス・フクヤマ氏の「長引く欧州危機」でした。そこで、最近よく言われる「二つの欧州」についての指摘があります。通常は、EUを拡大した際に、プロテスタントが多く、勤勉で規律ある北部諸国と、怠惰で浪費癖があるカトリック・ギリシャ正教諸国が、対比されます。
しかし、フクヤマ氏は、次のような主張をします。これら二つの欧州の違いは、「政治的恩顧主義」がはびこる欧州と、そうでない欧州との違いである。イタリア、ギリシャなどは、政党が血縁、地縁関係を利用して支持者を集め、政府の役職を支持者に分配することで、権力を争った。官僚機構が、選挙で選ばれた政治家に利用されてきた。他方、ドイツやイギリス、オランダは、そのような恩顧主義的な政党に支配されたことがない。
通貨同盟を創設したマーストリヒト条約には、それに対応する財政同盟を欠いていた。だが、それ以上に問題なのは、欧州人としての共通意識を醸成できなかったことである。EUの諸制度は、高度な専門知識を持つ官僚によって作られた。だた、汎欧州的な愛国心をどう生み出すかについては、誰も腐心しなかった・・
詳しくは、原文をお読みください。私が学生の頃、文化人類学や比較文化政治学という学問が、盛んだったことを思い出します。政治を支えるものには、制度だけでなく「文化」や「意識」「歴史と伝統」がありますね。
それでも、その差を乗り越えようと挑戦する欧州は、立派だと思います。