8月15日の朝日新聞「ニッポン前へ委員会」、神里達博大阪大学准教授の発言から。
震災がれきの広域処理をめぐって、拒否反応があることに関して。
・・実は、この問題の背景には、現代社会におけるリスク問題に特有の「二つの不在」が作用していると考えられる。
まず一つは、「知識の不在」である。現代の行政は原則として、科学的事実に基づいて客観的に遂行される。ところが、あるレベルを下回る放射線の健康影響については、科学的知見そのものが不足している・・
もう一つは、「責任論の不在」である。たとえば電車内で足を踏まれたとき、相手からの「すみません」の一言があるかないかは、大きい。もし、謝罪の言葉よりも先に「あなたの足にかかった圧力は弱いので、けがの恐れはありません、ご安心ください」などと言われたら、かなり温厚な人でも怒るだろう。だが、今回の原発事故に伴う放射能汚染の問題では、まさにそのような状況が続いている。程度の差はあれ、「足を踏まれた人」は間違いなく大勢いるのに、謝罪する者は事実上、現れていない。人々はきっとそのことに、どうにも納得がいかないのである・・