辻井重男著『暗号―情報セキュリティの技術と歴史』(2012年、講談社学術文庫)が、勉強になりました。私たちが「暗号」と聞いて思い浮かべるのは、軍事・外交での暗号です。第2次大戦での、ドイツのエニグマ暗号、日本の紫暗号など、その解読が戦争の勝敗を決めたという評価もあります。
そのような「暗い暗号」ではなく、近年は「明るい暗号」が社会で活躍しています。キャッシュカードの本人確認、インターネットでの本人確認、文書の本物であることの確認など、ITの発達・情報化社会で、秘密にする事柄と本物であることの確認作業が増えたのです。それを、「明るい暗号」が支えています。
「公開鍵暗号」といいます。鍵を秘密にせず公開するのです。しかし、その鍵は本人しか開けることができません。う~ん、私には「たくさんの桁の数字の掛け合わせで暗号にし、それを元の(ある一つの)掛け合わせに分解できるのは本人だけ」としか理解できませんでした。パスポートやクレジットカードの署名(公開済み)と、本人が目の前で書く署名が合致しているかを確認する例が出ています。この場合は、コピーで直ちに複製ができてしまいます。それを数学で複雑にして、簡単には複製できないようにします。
個人情報や企業情報が大量かつ瞬時に交換され、しかも他人には見られないようにする。大変な技術が使われているのです。