外国人が日本で買っていく物

外国人観光客が、日本で買っていく物はなんだと思いますか。日経新聞電子版の「映像ニュース」が伝えていました。「映像ニュース」の「話題・特集」から、「秋葉原で外国人に人気の商品」(前編)(後編)をご覧ください。
かつて日本人のヨーロッパ旅行の土産は、お酒、たばこ、チョコレートでした。その後、ブランドものの鞄やネクタイ、時計などに変わりました。アジアの人たちが日本で買っていく物には、意外なものがあります。
あなたなら、外国からのお客さんに何を勧めますか。私は文化的なものだと、東京国立博物館のミュージアムショップが、外国の方におもしろいのではないかと、紹介していました。他には、スーパーマーケット、ドラッグストア、文房具店などが、日本人の現在の暮らしを見てもらえるので、お勧めかなと思っています。
「これぞ日本だ」というものが思い浮かびませんが、和菓子屋さんも良いですよね。もっとも、生菓子は持ち帰ることはできませんが。

日本の移民対策

宮島喬御茶ノ水大学名誉教授が、東大出版会PR誌『UP』5月号に、「地方の時代と国際化」(連載「四半世紀の国際化、多文化化をみつめて」第4回)を書いておられます。先生は、日本での移民(定住外国人)問題について発言をしてこられました。
・・欧米でも移民の受け入れに地方の果たす役割は大きい。カナダでは・・ドイツでは・・イギリスも・・。
しかし同時に、受け入れの理念、政策、移民の権利や給付につき国が基本方針を示すのは当然で、たいていその主務官庁も決まっている。担当の大臣はメディアにも頻繁に登場し、国の方針を語る。だが、日本では国家の顔がよく見えない。訪れる外国人研究者から「移民の統合政策を担当するミニストリーはどこか」と尋ねられて、答えに困るのである・・

この問題については、「2009年11月15日の記事」で取り上げ、内閣府に定住外国人施策推進室が設置されたことを紹介しました。しかし、まだ世間での認知は薄く、先生の指摘のような状態が続いています。マスコミの政治部記者でも、何割が知っているでしょうか。
ここには、定住外国人(移民)にどう対応するかという方針の問題と、それを政治の課題として扱うかどうかという二つの問題があります。もちろん二つは関連しています。そして、課題を解決するためには政策をつくるだけでなく、それを所管する専門組織が重要です。「あまり受けない問題」は、とかく置き去りにされがちです。これを日本の中央政治と行政の「機能不全」というのは、言い過ぎでしょうか。
外国での事象には「移民」という言葉を使いながら、日本国内での事象には「移民」をあまり使わず、「定住外国人」と呼ぶことが多いのも、何かしら意図があるように思えます。

鎌田先生の新著

京都大学の鎌田浩毅先生が、またまた新著を出されました。『次に来る自然災害』(2012年、PHP新書)。
先日、私がこのHPに「坂野潤治先生が、1937年(昭和12年)が、日本が危機の時代から崩壊の時代に入る区切りの年と位置づけている」と書きました。鎌田先生によると、それと対比して、「まさに昨年の2011年が、地球科学的にも「大地動乱の時代」に突入した区切りの年」なのだそうです。以下、先生からのメールです。

・・歴史的には1945年にやってきた「崩壊」を、未来の日本で少しでも軽減するため、今から出来ることは何でもしなければなりません。具体的には、首都機能分散、たとえば各地方にバックアップ拠点としての「危機管理都市」をつくること、及び2030年代に起きる「西日本大震災」(東海地震・東南海地震・南海地震の三連動)への対処、を直ちに開始しなければならない、と私は考えます。
これは地球科学者からの緊急メッセージで、拙著の新刊の主要テーマでもあります。
なお、本書は「週刊東洋経済」に1年間連載した「ビジネスパーソンのための地球科学入門」をまとめたもので、「3・11」後に予想される地震・噴火 ・気象災害を解説した前編です。「エネルギー資源」「地球環境と生命」を扱った後編は、6月に出ます。
東日本大震災はいまだ終わっておらず、むしろ「巨大災害の世紀」が幕を開けてしまったのです。安全を約束された場所は、残念ながらこの国にはありません。歴史学者と地球科学者が連携し、「3・11」の教訓を未来に向けて活用する必要があるのではないか、と私は考えています・・

鎌田先生は、NHKテレビBSプレミアム「世界!旅する!グレートネイチャー」55日(夜7時~830分)にも、出演されるそうです。

海外で売れるクールな日本製品

5月2日の日経新聞「会社研究」は、三菱鉛筆を取り上げていました。
デジタル製品が次々と進化する中、地味に見える鉛筆やボールペンですが。連結売上高の4割を、海外で稼いでいるとのこと。握る部分にゲル状のバンドを巻き書きやすくしたボールペン「ユニ アルファゲル」は、韓国で売れています。福岡県の免税店で、韓国人観光客がこのペンを大量に買うようになりました。価格は、韓国の一般的なペンの5倍するそうですが、日本製のペンをクール(格好いい)と見る学生に人気が広がったそうです。このHPでは、なめらかなボールペンの「ジェットストリーム」を紹介したことがあります(2011年6月26日)。
もっとも、新興国では、フランスのBICが先行しています。

交渉は人間の信頼関係が基本

月刊『中央公論』5月号に、岡本行夫さんが巻頭論文「日本盛衰の岐路-速やかにTPP交渉参加の決断を」を書いておられます。現在のTPP交渉参加議論に欠けている視点として、消費者利益の視点、攻めの視点、日本が得る利益の視点、サービス貿易の4つを挙げ、また、7つの誤解に答えておられます。その内容は本文をお読みいただくとして、ここで紹介したいのは論文の末尾に紹介されている「貿易交渉も人間関係が基本」という部分です。1973年から79年まで続いた東京ラウンドでのご経験です。

・・1977年、数多くの通商摩擦を抱えた福田赳夫首相は「対外経済担当」のポストを新設し、牛場信彦元駐米大使を任命した。
筆者(岡本行夫さん)は当時、牛場大臣のカバン持ちとして、牛場さんがカウンターパートであるストラウス通商代表と文字どおりテーブルを叩きあって大声でやり合う場面に何度か同席した。まことに激しい交渉であったが、二人の間には強い絆が生まれていった。信頼関係ができれば、お互いに「あいつがここまで言うなら、これ以上譲歩をさせられないな」という見極めがつく。いったん合意した後は、両者とも全力で国内を説得した。日本では、牛場さんを信頼していた中川一郎農林大臣が陣頭に立って国内をとりまとめた。国益のかかった通商交渉とは、かくなるものである・・

納得します。相手のいる交渉、そしてそれぞれ組織や集団を代表している場合に、「敵」は前(相手)にいるだけでなく、後ろ(味方)にもいます。交渉する場合には、この妥協案で「相手は、その後ろを説得できるか」と「私は、私の後ろを説得できるか」がポイントになります。いくら当方の案が「正しい」としても、相手側代表が後ろを説得できない限り、交渉は成立しません。その逆も同じです。
そして、しばしば後ろを納得させる方が、やっかいなのです。日露戦争で、ロシアと交渉を妥結させても、非難を浴びた小村寿太郎が良い例です。「俺の顔を立ててくれ」という台詞は、相手に向かって言っていますが、その実、「後ろに向かっての言い訳をくれ」と言っているのです。

また、岡本さんは、続いて次のようなことも書いておられます。
・・アメリカの司令塔は、カーク通商代表である・・これに対し日本は、国家戦略大臣、外務大臣、経産大臣、農水大臣、国交大臣、厚生労働大臣などの閣僚が交渉を分掌することになるのではないか。各々の閣僚が日頃からの人間関係もないまま、案件ごとにカーク代表と折衝したのでは、迫力を持たない。「首席交渉官」のほかに、本来は牛場対外経済担当大臣のような存在が望ましいのだが、法律で閣僚の定数を増やせない以上、だれか1人に交渉権限を集約し、カーク代表との強い信頼関係をつくるべきだろう・・