宮島喬御茶ノ水大学名誉教授が、東大出版会PR誌『UP』5月号に、「地方の時代と国際化」(連載「四半世紀の国際化、多文化化をみつめて」第4回)を書いておられます。先生は、日本での移民(定住外国人)問題について発言をしてこられました。
・・欧米でも移民の受け入れに地方の果たす役割は大きい。カナダでは・・ドイツでは・・イギリスも・・。
しかし同時に、受け入れの理念、政策、移民の権利や給付につき国が基本方針を示すのは当然で、たいていその主務官庁も決まっている。担当の大臣はメディアにも頻繁に登場し、国の方針を語る。だが、日本では国家の顔がよく見えない。訪れる外国人研究者から「移民の統合政策を担当するミニストリーはどこか」と尋ねられて、答えに困るのである・・
この問題については、「2009年11月15日の記事」で取り上げ、内閣府に定住外国人施策推進室が設置されたことを紹介しました。しかし、まだ世間での認知は薄く、先生の指摘のような状態が続いています。マスコミの政治部記者でも、何割が知っているでしょうか。
ここには、定住外国人(移民)にどう対応するかという方針の問題と、それを政治の課題として扱うかどうかという二つの問題があります。もちろん二つは関連しています。そして、課題を解決するためには政策をつくるだけでなく、それを所管する専門組織が重要です。「あまり受けない問題」は、とかく置き去りにされがちです。これを日本の中央政治と行政の「機能不全」というのは、言い過ぎでしょうか。
外国での事象には「移民」という言葉を使いながら、日本国内での事象には「移民」をあまり使わず、「定住外国人」と呼ぶことが多いのも、何かしら意図があるように思えます。