年別アーカイブ:2011年

日本社会、信頼感の欠如?

2011年8月22日   岡本全勝

8月17日の日経新聞経済教室、ビル・エモットさんの「信頼と連帯感取り戻せ」から。
・・経済学とは、単に統計や方程式を扱う学問ではなく、根本的には人間の行動を研究する学問である。そして人間の行動では、心理的な要素が重要な役割を果たす・・
日本経済、いや東北の経済でさえ、東日本大震災で長期的に影響を被ると予想すべき理由は何もない。問題は、この「長期的」という概念である。この言葉は漠然としているが、重要な意味をはらんでいる。
英国が生んだ20世紀で最も著名な経済学者ケインズは、英国経済は30年代の大恐慌から「長期的には」立ち直るだろうと述べた批判論者に対し、「長期的にはわれわれは皆死んでいる」と答えた。言い換えれば、人の一生は短期間で終わると述べたのである。人間にとっては、数年かせいぜい10年の単位で短期的に起きることの方が、長期的に起きることよりも重要になる・・
(経済の回復について)ともかくそれは、人間心理と、そして国から市町村にいたる共同体の両方にまつわる問題となるだろう。
なぜ心理的かと言えば、震災後初の景気回復を経てから日本がたどる道のりでは、信頼感が決定的な要因となるからである。投資に対する企業の信頼感、将来に対する家計の信頼感である。そしてなぜ共同体かといえば、望ましい未来の実現に向けて何をすべきかの決定は、国か地方かを問わず、共同体全体で醸成されるコンセンサス(合意)の度合いに左右されるからである。そしてこの決定は、信頼感にも影響を及ぼす。
日本で政治が混迷しているのは、このコンセンサスと共同体の連帯感の欠如が原因である・・
大震災に関しては、国民は深い同情の念を共有している。だが、これから何をすべきかについて、何らかの強い感情が共有されているようには見えない・・

ごく一部を紹介しました。原文をお読みください。
私は、日本社会全体の信頼感が薄くなったとは、考えません。政治と経済について、うまく行っている時は国民は信頼する、うまく行っていない時は信頼しない、ということでしょう。学校や教師に対しても、同じです。古人曰く「金の切れ目が縁の切れ目」「苦しい時に分かる真の友」・・。
しかし、その信頼が薄くなると、社会や経済がうまく回らなくなり、さらに信頼がなくなるという悪循環に陥ります。もっとも、「信頼していない」という質問と答が成り立つのは、一定の信頼があるからです。全く信頼していないなら、そのような問いと答は成り立ちません。

科学者の行政への助言

2011年8月21日   岡本全勝

8月18日の日経新聞経済教室に、吉川弘之東大元学長が、原発事故をめぐる科学者の役割について、「科学、統合的知性の創造を」を書いておられました。
・・3月11日以降、新聞、テレビには多くの専門科学者が登場したが、その解説の内容は一致せず多様であった。これらの科学者の解説努力の結果は、一般の人々の不安を増大することとなった。
さらに問題なのは、事故対応の行動者に対する科学者の助言である。行動者とは、事故現場で働く作業者、作業指示者、電力企業、機器企業、自治体、政府などであり、その決定と行動が、原発事故の進行や地域の人々の避難などに影響を与える。行動者の行動が事故の収束に有効なものであるために、原子力発電に固有の専門的知識を持つ科学者の知識を結集する助言が必要だったはずである・・
科学者の助言には、工学研究者が企業技術者に行うような同じ領域内での専門的助言と、行政への助言のように専門内にとどまらない公的決定に対する社会的助言という2つの場合がある。原発事故への助言は社会的助言である・・
この社会的助言は「独立で、偏りがなく、そしてどの学派も代表しない」という中立的助言でなければならないとの考え方が、欧米では定着してきている。これは欧米において生命倫理、遺伝子組み換え食品、BSE(牛海綿状脳症)などの困難な経験を通じて、科学アカデミーと社会との間で合意に到達したルールである。もし上記の考えに従わず、一人ひとりの科学者が自己の考えをそのまま助言すれば、学会の中での学問上の対立が社会に持ち込まれて、社会的紛争を拡大してしまう。
わが国でも、公害、薬害、食品衛生、干拓、ダム建設などにおける科学者間の解釈の違いが政策決定の差異を強化して社会的紛争を激化させ、被害や社会的損失を拡大してしまった例が多くあるが、残念ながらこれらから学ぶことがなかった・・

先生は、さらにいくつも重要な論点を、指摘しておられます。原文をお読みください。

避難所と仮設住宅の環境調査

2011年8月21日   岡本全勝

今日は、復興大臣と、石巻市に避難所と仮設住宅の視察に、行ってきました。石巻市は、16万人の市が中心部を襲われ、津波被害が最も大きい市です。がれきだけでも、岩手県内市町村の総量に匹敵します。
最大時では5万人の人が、260か所の避難所に、避難しておられました。現在は、2,300人の方が、64か所の避難所におられます。先日書きましたが、全国では8,600人、宮城県では5,700人おられます。
石巻市では、仮設住宅建設も進み、9月には全員が住宅に移ることができる予定です。今なお全員が住宅に入っていないのは、避難者の数が多かったことと、広範囲に浸水したため仮設住宅建設適地が無かったのです。
今日は、避難所1か所と仮設住宅団地を、見せてもらい、話を聞いてきました。避難所や仮設住宅の生活環境の問題を調べに行ったのですが、ここでは大きな不満はありませんでした。いくつか注文をもらったので、市役所と対応を検討します。

皆さんの要望の第一は、早く町の復興計画をつくって、元の住宅に戻れるのか移転する必要があるのかを、決めて欲しいということでした。皆さんの意識が、復興の段階に入っていることが、良くわかります。市役所は、既に計画(住宅を建てる場所の線引き)の案をつくっています。これから住民の意見を聞き、同意を得て進める予定です。町の将来を決めるのは、住民であり、議会と首長です。
石巻は、港湾と漁港の町です。漁港と水産施設の復旧計画も、順次進んでいるようでした。まずは、応急復旧です。町の中のがれきも、片付いていました。もっとも、壊さなければならない建物が、たくさん残っています。

塾頭との懇談会

2011年8月20日   岡本全勝

今日は、東大客員教授時代の塾頭3人との、懇談会。茨城県出張から帰って、上野駅前に設営してもらった会場に駆けつけました。1人が、近日中にアメリカに留学するので、その壮行会です。日程を決める際に、私が「土曜なら大丈夫だろう」と言って、この日にしてもらったのですが・・・。
3人と初めて会ったのは2002年ですから、10年が経ちました。3人とも、立派な政治行政の研究者になっています。当時も今も、私の方が教えてもらうことが多いです。私がお話しできるのは、彼らが経験できない、官庁や官邸での経験です。もっとも、個人的な経験談は「偏向」していて、危ないです。

いわき市と茨城県の被害

2011年8月20日   岡本全勝

今日は、復興大臣のお供をして、福島県いわき市と茨城県に、行ってきました。
福島県はご承知のように、浜通りの真ん中(双葉郡)が原発で避難していて、沿岸部の南部では、いわき市だけが残っています。原発事故以来、双葉郡からの避難者を、多数受け入れています。いわき市自体も自主避難をしたこともあり、生活必需品が届かなくなって、大変な苦労をされました。一時2万人おられた避難者も、今日で避難所を解消しました。
しかし、市長は、これからも、双葉郡からの避難者のうち、当分地元に帰ることができない人たちを受け入れるとの意向を示されています。また、放射能汚染されたがれきの処理など、たくさんの課題があります。

茨城県は、東北3県の陰に隠れていますが、大きな被害を受けました。住宅被害は17万戸に及んでいます。津波被害は3県ほどではなかったのですが、地震被害が大きいのです。住宅のほか港湾施設の被害、田畑での液状化、風評で観光客が来ないことなどです。
現場に行くたびに、どのような点に悩んでおられるかが分かり、私たちが取り組まなければならない課題の優先順位が分かります。大臣や私たちの仕事の都合で、視察が土日曜になってしまいます。受け入れてくださる地元市町村や関係団体、住民の方には申し訳ないのですが。