11月12日の朝日新聞オピニオン欄での、ヨーロッパ金融財政危機の記事から。
ヨシュカ・フィッシャー、元ドイツ外務大臣
・・ユーロ圏は、世界的な金融危機の真ん中にいる。ユーロ圏は国家ではなく、もろい「構造物」でしかない。危機はそこを直撃している。ドルに次ぐ世界第2の通貨であるユーロだけが、国家をともなっていない。これこそが、国民と市場の信頼を無にし、国際金融システムを大惨事の瀬戸際に追い込んでいるのだ。
言い換えれば、現在の金融危機はユーロ圏の政治的危機の表れであり、欧州プロジェクトそのものに疑問を投げかけている・・
スティーブ・キング、イギリス大手金融グループのHSBCチーフエコノミスト
・・ユーロ圏はとても興味深い実験だ。国民国家の利益を尊重しながら、より大きな通貨圏を築き、国境をまたいだ資本の流れを最大限に活用する。これが生活水準の向上をもたらしたのは確かだ。ただ、通貨統合にともない国家主権は縮小するはずだが、ギリシャの混乱ではっきりしたように、各国の国家主権が前面に出てユーロ圏全体の利益が犠牲になっている。
・・いまユーロ圏で起きているのは、地球規模で起こりうる負担の分かち合いの問題が起きたときの「最後の予行演習」なのだろう・・
遠藤乾、北海道大学教授
・・第2次大戦後に本格化した欧州統合は、60年以上にわたって常に危機に直面してきました。危機のたびに迷走し、迷走しながら進んだ。欧州統合の歴史とは、偉大な政治家とグランドデザインの歴史ではなく、危機と迷走の歴史です。
・・EUは「みんなで決めた」というより、「機能すること」で続いてきた政治体です。簡単に言えば、みんなの役に立っている間は、不満は出てこない・・