藤井彰夫著『G20 先進国・新興国のパワーゲーム』(2011年、日本経済新聞出版社)が、勉強になりました。
2008年、リーマン・ショック後の世界金融・経済危機に対処するため、G20首脳会議が開かれるようになりました。この本は、G20を軸に、先進国と新興国の、経済と金融秩序を巡るせめぎ合い、イニシアティブの争奪を描いたものです。世界経済や金融についてのニュース、さらに各国の首脳会談のニュースは、断片的にマスコミで伝えられますが、それがどのような流れの中にあるのか。このように、近過去の出来事を、構図の中で解説してくれる本は、役に立ちます。
世界政府がなく、国際連合も十分に機能しない。しかし経済や金融は国境を越えて動き、危機は国家単位では押さえられない。これが現状です。それに対し、どのような仕組み、機構を作って対処するか。G20は条約や決まりもない、任意の集まりです。運用次第で、機能し、また機能しません。これが、歴史と政治のダイナミクスなのでしょう。そしてその役割は、あとで歴史となって理解されるのでしょうね。
リーマン・ショックによる世界金融・経済危機は、2008年9月麻生政権が発足して直ちに直面した、大きな課題でした。まずは、それに忙殺されました。日本が、資金繰りに困る各国を支援するため、IMFに1,000億ドルを融資することを、各国に先駆けて表明しました。各国からは大きな評価を得たのですが、国内ではその意味が理解されませんでした。官邸での総理記者会見でも、官邸詰めの記者さんは政治部が多く、質問も出ませんでした。
国連総会やその場を利用した各国首脳との会談、ASEMやAPEC、G20、日中韓首脳会議と、立て続けに国際会議や首脳会談がありました。世界第2位(当時)の経済大国日本への期待の大きさを、肌で感じました。日本が景気刺激のために超大型の財政出動をするので、各国にも付き合ってもらうべく説得すること、大恐慌の轍を踏まないように保護主義を取らないことの説得など。これが世界の経済危機を救う仕事だと、実感しました。
総理秘書官室の担当は、財務省出身、国際金融のプロである浅川秘書官(副財務官)でした。ニューヨーク、北京、リマ、ワシントン、ロンドンと、総理のお供をして、政府専用機で往復しました。ほとんど寝ることもできず。
2008年の世界金融・経済危機は、欧米の金融機関・金融市場が震源地でしたが、今回2011年の世界金融・経済危機は、南欧の国家財政が震源地です。このような危機を克服し、世界の統治の技術、国際機構は進化するのでしょう。