10月9日の日経新聞文化欄に、原研哉さんが「日本の家を輸出する」を書いておられました(古くなってすみません)。
・・日本の家を輸出する。こう言うと、狭くて画一的な住居が世界の人々の興味を引くのだろうかと、怪訝に思われるかもしれない。
しかし、玄関で靴を脱ぐ暮らし方は、身体と環境が直ちに触れあい対話する未来型住環境として大きな可能性を持っている。また、住空間を自分の暮らしに合わせて自在に作り直そうという今日の機運は、日本の伝統とハイテクを掛け合わせた新たな住環境の出現を予感させるのである。
・・風呂やトイレなど生活機器については、繊細・丁寧・緻密・簡潔を旨とする日本の美意識が、これをさらに進化させるだろう。シャワー付き便座もクリーム状の泡風呂も、清潔・爽快な住環境の高度化を加速しそうである。
・・お隣の中国は都市化が加速し、旺盛な住宅建設に沸き返っている。しかし出来上がる集合住宅は、まだまだ粗い。ここに、未来型の日本の「家」を持ち込めばどうなるか・・
ものづくりは今日、アジア全域に広がり、単体の家電を独占的に輸出する時代は、終焉を迎えつつある。日本の資源は石油や鉱物ではなく、「美意識」である。千数百年の伝統を持つ生活文化大国として、いかなる産業ヴィジョンを見出し、世界にどんな価値を提供できるかが、今まさに問われている・・
なるほど。私は、家は各民族の文化の結晶であり、そう簡単に輸出や輸入はできないと考えていました。畳にしろお風呂にしろ。しかし、現在の集合住宅(アパートやマンション)を考えれば、日本の最先端の住宅は、輸出するだけの価値はありますね。それは、電化製品などとセットになった、住みよい空間です。ものを単体で輸出するのではなく、セットで輸出する。その際に、家は良いパッケージでしょう。
日本の伝統的民家を輸出することは、難しいでしょう。日本の都会でも建てることは、庶民には困難です。しかし、現在の日本のマンションや一戸建ては、狭い中に工夫をして、住み良さを追求しています。安全であり、快適です。欧米の大邸宅とは違った良さがあります。車で言えば、大型のアメ車(これも古い言葉になりました)と違う、コンパクトだけど運転性能と居住性に優れた日本車です。
欧米の建築を輸入するとか、大きなビルや記念碑的建物を設計することも重要ですが、日本の家を輸出することは、重要な戦略です。日本は、輸入と模倣、国内での成熟の時代を過ぎ、輸出の時代に入っています。どの程度、日本の家が輸出されているのでしょうか。建築家とハウスメーカーの奮起を、期待したいです。