復興への民の力

被災地の復旧と復興というと、国や自治体の仕事が取り上げられますが、民の力も大きいです。私がかねて主張している、私・共・官の3元論です。公は、官が独占するのではなく、民間の公も大きいです。

私企業は、経済活動を通じて、すなわち従業員を雇用したり、必需品を供給することで、住民の暮らしを支えています。いくら道路と堤防、住宅を復旧しても、働く場がなければ、暮らしは復興しません。商店やガソリンスタンド、宅急便がないと、暮らしは成り立ちません。
これに関連して、旧知の田澤さんから、テレワークによる復興支援を教えてもらいました。被災者が テレワーク(在宅勤務・在宅就業)で、被災地に居ながら働くための雇用支援です。

また企業は、経済利益を追求するだけでなく、社会的貢献をしています。7月31日の新聞に、三井物産の環境基金復興助成の広告が出ていました。第1回締め切り分として、被災地の復興研究のために、約4億円の助成をしてくださいます。ありがたいことです。
このような、企業の経済活動を通じた復興支援、義捐活動を通じた復興支援の役割は大きいです。これらを、どのように地域の復興に活用させてもらうか。また、協力してもらうか。私たち復興本部の大きな課題です。
このほかに、共(利益を追求しない活動)もあります。「基本方針」では、官の役割のほかに、民の力も並べて書きました。(この項続く)

早速次の作業に

7月29日に「基本方針」を決定したので、復興本部事務局は、本格的に具体作業に入りました。昨日月曜日には、担当大臣から「急いで取り組むべき事項」について、事務局参事官に指示が出ました。
もちろん、事務局が直営で行う項目は少なく、多くの復興事業は市町村と各省庁で行ってもらいます。各府省へ指示を出し、その調整をするのが、我が事務局の任務です。今日2日の閣僚懇談会では、担当大臣から各大臣に、所管の事業について、当面の事業計画と工程表を早く作って欲しいことと、被災市町村を支援する府庁横断的なチームの編成について、協力のお願いをしました。
ちなみに、事務局職員は現在、常勤職員だけで110人、現地本部を入れると130人余りになりました。日々、膨れています。東京の本部では、3人の次長の下、22人の参事官(課長)が配属されました。22課というと、かなり大きな組織です。

先日紹介したように、私たちの仕事を理解してもらうために、ホームページも作りました。
お詫びです。ホームページに、誤字があります。「仮設住宅建設情報」になっています。読者の方から、指摘を受けました。ありがとうございます。明日、訂正します。また、リンク先がおかしいページも、ありますね。順次、加筆訂正します。広報班のA参事官、A補佐、T主査お願いします。

経済のグローバル化と日本文化

岩波書店PR誌『図書』8月号、原研哉さんの「北京から眺める」から。
・・日本は千数百年という歴史を持ちながらも、明治維新を契機に西洋文明を全面的に受け入れた。これは文化史的に見ると一つの挫折であるが、そのおかげで、近代国家として西洋列強に浸食されない国としてすれすれの体裁を保つことができた・・
・・明治に日本を置き忘れ、工業化によって風土を汚したといっても、そのままで済ますわけにはいかない。千年を越えて携えてきた文化は、そう簡単に捨て去れるものでもない・・
・・ふすまや障子のたたずまいは、空間の秩序のみならず、身体の秩序、すなわち障子の開け閉てや立ち居振る舞いという、躾けられた所作に呼応して出来上がってきたものだ。いかに美しく、そしてささやかなる矜持を持って世界に対峙し、居を営むかという精神性と一対をなしている・・
・・経済がグローバル化すればするほど、つまり金融や投資の仕組み、ものづくりや流通の仕組みが世界規模で連動すればするほど、他方では文化の個別性や独創性への希求が持ち上がってくる。世界の文化は混ぜ合わされて無機質なグレーになり果てるのを嫌うのだ
・・幸福や誇りは、マネーとは違う位相にある。自国文化のオリジナリティーと、それを未来に向けて磨き上げていく営みが、結果として幸福感や充足感と重なってくるのである・・